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「不可能なことだけが危機をこえる」(『思想としての新型コロナウイルス禍』)〜コロナ禍に立ち向かう基本ロジック〜

 新型コロナウイル感染が世界中に拡大し、医療・経済・教育などあらゆることが変化し、多くの議論が行われている。現実問題として医療や経済などに目が向かいがちであるが、終息する気配もなく、どこが退廃的な雰囲気が醸成されているのはなぜだろうか。

 大澤真幸の論考「不可能なことだけが危機を乗りこえる」(『思想としての新型コロナウイル禍』)はその中でも社会学の視点で論理的にコロナ禍を考察し、今後の展望を述べている。キーワードは「連隊・人新生・倫理・神的暴力」だ。これは『思想としての新型コロナウイウイルス禍』に収録された思想家・専門家による論考集の一つである。

 本書には著者の説明が一切書かれていないためここで紹介すると、大澤真幸は、1958年生まれの社会学博士で、千葉大学文学部助教授・京都大学大学院人間・環境学研究科教授を歴任している。また、早稲田大学でも教鞭を執っているようだ。本稿のタイトルには逆説的な表現が含まれているが、中身もそれを多用した展開が多く、知識人が好むような表現スタイルである。

 筆者はボーダーレスな問題にボーダフルに対応することとは解決への逆ベクトルであるとしている。近年話題となっている民主主義の概念の再構築と合わせて参考になる。この視点は出版はコロナ禍から1年しか経っていないにもかかわらず、今でもまったく色褪せていない。コロナ禍によって生じる諸問題の根底にあるものが同じであり、それが現状でも改善されていないからであろう。それは結局、ウクライナ侵攻を終結させられないといった、日本だけではなく国際的な問題に共通派している内容だろう。グローバルな問題にはグローバルに対応すべきという主張があり、それこそがコロナ禍を考えるロジックの原点である。


※参考文献

大澤真幸、(2020 5 12)、「不可能なことだけが危機をこえる」(『思想としての新型コロナウイルス禍』より)河出書房新書

大澤真幸、大澤真幸オフィシャルサイト(http://osawa-masachi.com)


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