『なぜ「おしえない授業」が学力を伸ばすのか』〜高次の指導指南書〜

 初任校ではノートパソコンを活用した最新の講義型の授業をしていた(つもりだった)。当時は英文解釈が中心の予備校風の授業で、生徒に寝られたら見た目が悪いと必死だったが、結局テスト一週間前に演習させるのが最も力がつくなと感じていた。実はその秘密が「生徒の能動的な学習」だったのだろう。大学院での研究以降は、「アクティブラーニング推進校」などの経験から、生徒が「能動的に学ぶ」、そしてそれが結果的に楽しい授業を実践している。春休みは授業を総括し改善するには最適で、今年はこれを参考に授業の組み立てを考えてみた。

 著者の山本崇雄は、執筆当時は東京都立両国高等学校附属中学校主幹教諭で、現在は新渡戸文化中学校・高等学校等の複数の学校・企業と連携して英語教育の指導を行なっている。東進ハイスクルールの母体である株式会社ナガセと教育新聞社が主催する夏の教育セミナーでは分科会で安河内哲也先生とともに研修講師として活躍されている著名な方である。

 本書は、「アクティブラーニング」の基本的な概念(ここでは「教えない授業」と同義)を学べるが、それ以上に著者の「教えない授業」の理念の根底に触れられる。本書にあるような教育観を軸に、現場の教師として、授業だけではなく、学年運営や部活動にまで広く教育全般に適応している。全国規模の研修会で講師を務めるに相応しい現場指導者である。

 これからの時代は暗記した知識量を競うのではなく、情報をいかに活用していくかという視点、そこからさらに視野を広げていく方針は共感できる。生徒は勉強だけではなく、あらゆることに通じるものだ。ただし、この教育が成り立つのはある程度の学力が前提になっている。筆者は、両国高校だから実践可能だったのではないかという主張を真っ向から否定するが、やはり将来的にある程度の難度の高い大学受験を目指す生徒が(少なくともそんグループに数人いないと)成り立たない。半分程度の高等学校では、本書に紹介されている実践例では教師の負担は軽くなるどころか授業が成立しないのだ。また、この「教えない授業」(つまりこの手法でのアクティブラーニング)の成績向上の客観的なエヴィデンスも乏しい。ただ、こうした賛否両論の手法の中にも、英語教育及び教育全体に対して読者に示唆するものはある。本書は高次のアクティヴラーイングの指南書として活用できるだろう。

※参考文献

山本崇雄、(2016 6 30)、『なぜ「教えない授業」が学力を伸ばすのか』日経BP

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