『サレタガワのブルー』(漫画版)〜不倫から純愛への脚本力が面白い〜
『サレタガワのブルー』はセモトちかによる女性漫画で、「読んだら必ず不倫をしたくなくなるマンガ」をコンセプトにしている。出版社は集英社で、アプリ「マンガMee」に掲載されている。ただし、単純な復讐劇ではなく、不倫された側の葛藤、苦しみなどを繊細かつ巧妙に描かれている。全145話(補足も12話あり)で、2018年から2022年まで発表された。2021年には漫画版の前半部分がドラマ化されている。
主人公(田川暢)は、妻(旧姓:飯森藍子)を溺愛していて、不倫は他人事だと思っていた。しかし、現実は妻子ある上司(森和正)と不倫している。徐々に明らかになる妻のサイコパスな言動。暢は偶然から妻の不倫相手である本妻(旧性:田崎梢)とタッグを組んで、離婚に向けての戦いを始めることになる。
作者は最初から不倫は悪であり、それを成敗することをストーリーの途中に挟むので、時代劇「水戸黄門」のようなスカッとする展開が期待できる安心感がある。またアプリの漫画版は縦読みなので、単行本とは違うコマ割りで構成されていてその使い方がうまい。複数の出来事も読者が容易に理解できるように描かれている。細かい伏線や今後の暗示、意図的な色使いや表情の出し方などの繊細な構成も多い。(そもそもタイトルが2人の主人公の名前をもじっているセンスが良い。)そう考えると後半の一部がグダグダ感があったが、それはエンディングに向けての下地であったのだから構成が素晴らしいに尽きるだろう。
キャラクターによってその後の運命に多少の温度差があるのものの、どの結末を考えても不倫に美徳は見出せないだろう。ただ、個人的には、最後の濡れ場が綺麗過ぎてたような気がするし、そもそも主人公が選んだ人生に違和感を覚えるのは、子どもを生み育てることに関する恋愛の価値観の違いだろう。さまざまな(じれったい)展開を経て、最後は感動的でエンディングを迎える。そして確かに不倫をしたいとは思わなくなる漫画である。いずれにしても、この漫画がヒットしたのは作者のブレなテーマ設定とそれを紡ぐための緻密な脚本力で、最後はきっとブルーからハッピーな気分に変わるだろう。
※参考文献
セモトちか、(2018-2022)『サレタダワのブルー』(漫画版)、集英社
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