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『モラルの起源 ー実験社会学からの問い』〜規則遵守とは?〜

  担任の先生が4月の学級目標や委員会等を決める一連のホームルームを学級開きという。そこで私が必ず触れるのが規則遵守の話だ。校則の意味や学級内での責任について理解させることが目的だ。今日、紹介する新書『モラルの起源』は、規則遵守の意味やモラルの重要性を科学的に推論する文献で、教育現場にも応用できる理論である。

 私は学問の分類の中で、理系は生活を豊かにし、文系は心を豊かにすると考えている。本書は、その中間地点、つまり自然科学の最先端の知識を人文社会科学の知恵と融合するという試みがなされている。具体的には、人の社会を支えるモラルの本質、筆者はこれを文系学問の最重要テーマとしてメタモラルの可能性を追求してる。例えば、血縁でコロニーを構成するミツバチに対する非血縁者で社会を構成するでは人間の差異だ。人間は、個人の利益を守るためには、秩序を保つために自己犠牲してでも反社会者に罪を与える気持ちがあるここ、つまり違反者へ処罰を与えると自身が不遇の身になるという高次のジレンマを乗りこえる特性を持っていると推論するのだ。

 このロジッを校則に当てはめた場合、その遵守が税金で支払うことに秩序の担保を意味すると考えると、非常に意味深く説得力があるのだ。こうした例を「共有地の悲劇」や「公共財ゲーム」で平素に説明している。「規則は合理的であり、遵守することもまた同様である」と言えるだろう。校則のない学校は生得的に意識が高いという証明にもある。

 後半では、「共感」や「正義」、「モラル」とは何かを、様々な仮説とその実験結果をもとに考察していく。このような今までにない人間社会の心理(真理)を新規の手法、「社会実験学」を垣間見ることが出来る。そして、ここには文部科学省の「文系学問の再編成」への反骨精神の気概を強く感じる。社会実験科学は、これからも学問から私たちのモラルのあり方まで幅広い考察がされることだろう。

※参考文献

亀田達也、(2017 3 22)、『モラルの起源 ー実験社会学からの問い』岩波新書

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