『君の名は』〜「順番」が大切〜

 東京の大都会に住む男子校高校生、立花瀧。そして飛騨の田舎に住む女子高生、三葉。まったく接点のない二人であるが夢を見るたびにお互いが入れ変わっていることに気付く。前半はそんなシチュエーションをおもしろおかしく描いているのだが、それは後半への計算し尽くされた怒涛の展開への伏線だった。隕石の降る夜に起こる2人の愛の形と世界の運命を変える(いわゆる「世界系」の)壮大な物語りである。

 『君の名は』は2021年6月現在、日本歴代興収ランキング5位、アニメーション部門では世界歴代ランキング2位の映画市場に残る大ヒット作品である。新海誠は処女作「ほしのこえ」で脚本等のすべての過程をほとんど1人で行ったという。以降の作品でも数多くの名だたる賞を獲得している。本作は特にその繊細なイラスト描写とRADWIMPSのドラマチックな音楽が重なって絶大な指示を集めた美しい作品となったのだろうと考える。

 さて、『君の名は』の次の作品が『天気の子』である。深海監督は、前者を意識しつつより挑戦的な作品を目指したようである。そういった意味で、『天気の子』から『君の名は』を観てしまうと監督の意図とは異なった捉え方になってしまっかもしれない。『君の名は』を最初に見た方が監督の意図が分かるかもしれない。もしまだ両者作品を見ていないなら、発表順での鑑賞をお勧めする。ただ、両作品を別の物語りとしつつも比較・対照しながら考察するとより深く楽しめるだろう。

(※これ以降は物語に関する記述がある。)

 それにしても、全体像(と世間の感動)を共有することが難しかった。タイムパラドクスを回避するためにパラレルワールドであると解釈すれば、結局は三葉を救うことにはなっていないのではないか。そうなると本当の意味でハッピーエンドになっていないのではないか?何かしらの解釈や思惑があるとして、ストーリーラインを追いながらその意味を捕まえることが大変だ。再考が必要かもしれない?それでも多くの人が繊細で写実的なアニメーションと細かい伏線や工夫、斬新な設定や音楽を楽しんだ意味が良く分かる気がする。次の新海誠作品が楽しみで仕方ない。

※参考文献

新海誠、(2016 8 26)、『君の名は』コミック・スウェーヴ・フィルム

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