『天気の子』(感想編)〜愛と世界、選択の物語〜
英語の時間に「My favorite movie or book」というテーマでスピーチ(プレゼンテーション)させた。その中で、映画『天気の子』(Wethering with you)の紹介があり、設定されている場面のほぼすべてに土地勘があったことが視聴するきっかけだった。しかし、それは単なるエンタメ作品ではなく、深い意味を持った愛の作品だったのだ。
監督は新海誠で、前作『君の名は』(Your Name)は有名だろう。キャッチコピーは「これは、僕と彼女だけが知っている、世界の秘密についての物語」で、主題歌はRADWINMPS「愛にできることはまだあるかい」である。ストーリーは離島を助け出した家出少年の穂高が、部分的に悪天候を晴天に変える能力を持つ「晴れ女」陽菜と出会い、困難を乗り越えてたどり着く恋愛物語である。というのが表向きのストーリーラインで、多くの場面に張られている絵やセリフの伏線が「愛の選択」の意味を考える最終話につながる裏の意味がある。無駄がない。
最終話の祈りに何を見出すかが本作の見どころだろう。特殊能力を失った陽菜が最後に祈っていたのは晴れ女としての代償を払わずに自分が生きることになった自責の念だろう。祈りの手の組み方が異なっているのである。つまり、陽菜は特殊能力を使おうとしたのでないことが分かっていて、穂高の分まで祈っていたのだろう。自分や愛する人を失っても他者や世界を救うテーマ作品は多いが、それが現実に「選択」をすることになったときに、どれだけそれが可能だろうか。
他者との繋がりや生きている意味を見つけるために人柱となった陽菜の生き方、東京都は対照的な水配り伝説のある神津島、圭介の死んだ妻や会えない子どもへの想い、歌詞と連動した感動したストーリー展開、など。「きっと大丈夫!」だと深く、そして感動を覚える作品である。そんな作品レヴューを穂高が陽菜に会うために走った場所が見える場所から書いてみた。

(マクドナルド西武新宿駅前店:帆高が初めて陽菜にあった場所。)

(神津島東屋:終盤に出てくる別名「あずま展望台」)
※参考文献
新海誠、(2019 7 19)、『天気の子』コミック・スウェーヴ・フィルム
Recent Posts
See All人は辛い状況に置かれた時に、その因果関係を追求する傾向があるのだと思う。例えば、困っている従業員は「なぜこんな会社のために働いているんだろう」と考える。個人的には、言うまでもなくあのアウシュビッツの強制収容所に比べたら比較にならないほど幸運であるが、それでも「なぜ生きているのだろう」と考えることが多い。従って本著は「生きる意味」を当事者として読めたように感じる。 『夜と霧』の主人公は、第二次世界大
2021年、早稲田大学に「国際文学館」、通称「村上春樹ライブラリー」がオープンした。校友会(卒業生)である村上氏の寄付がきっかけとなり、「文学の家」として「キャンパスのミュージアム」化に貢献している。ここには村上春樹の著書だけではなく、彼のレコードやCDのコレクションも置かれている。彼の世界観をいつかは感じてみたいとまずは短編を手に取った。 ストーリーはと短く、場面のほとんど車内のドライバーとのや
新型コロナウイル感染が世界中に拡大し、医療・経済・教育などあらゆることが変化し、多くの議論が行われている。現実問題として医療や経済などに目が向かいがちであるが、終息する気配もなく、どこが退廃的な雰囲気が醸成されているのはなぜだろうか。 大澤真幸の論考「不可能なことだけが危機を乗りこえる」(『思想としての新型コロナウイル禍』)はその中でも社会学の視点で論理的にコロナ禍を考察し、今後の展望を述べている