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『新世紀エヴァンゲリオン(TV版)』〜セカイ系の出発点〜

 1990年代中旬に斬新なストーリーで社会現象になった日本のアニメーション史の金字塔的作品だ。人類を殲滅しようする使徒に対抗するため汎用型人間型ロボット(エヴァンゲリオン)で対抗する。一方で、世界の命運を掛けて戦う登場人物の内面描写が宗教や哲学、心理学などの側面から描かれ、独特の世界観が展開される。主題歌の『残酷な天使のテーゼ』は累計で約150万枚を売り上げる大ヒット作品にもなった。

 物語の前半は、主人公の少年が使徒と戦うことへの恐怖や葛藤が描かれる。IT用語も駆使されながら緊迫した戦闘が続いていく。ご都合主義でマンネリ化しそうな頃、主人公が命の選択を迫られ、内面描写を描く場面が多くなっていく。そして好みの分かれそうな残忍なシーンや性的描写もありつつ、最後の使徒との戦いまで一気に話が進んでいく。そして、最後の2話は、賛否両論の分かれる衝撃的な描写と構成になっている。主人公を中心とした内面のみが描かれ、戦いの後の現実舞台には一切触れられていないのだ。

 結局、「使徒」は何だったのか。私は「エヴァンゲリオン」「人類補完計画」といった世界観を作り出しているキーファクターが理解できてない。つまり、「なぜ使徒は人類を襲うのか」「加持の行動の意味は何か」「ゼーレやネルフの真の目的は何か」「結局、最後はどうなったのか」といった幹の部分すら分からない。その中に「自己肯定感」「自尊心」「死」といった哲学的テーマが編み込まれているため、作品の本質を理解するのは難解としか言いようがない。

 テクノロジーを駆使した世界を守る戦いかと思いきや主人公の複雑な内面を描く視点が斬新だ。この独特の世界観が「セカイ系」(世界の運命と主人公の内面に焦点を当てて描く作品)の元祖と言われる所以である。斬新な手法や視点は大きなムーヴメントを引き起こおこした。実際、新海誠監督の『ほしのこえ』『天気の子』はその代表例で、後世に与えた影響は非常に大きいだろう。ただ私にはこの映画を語るには早計であるようにも感じる。



※参考文献

庵野秀明、(1995 10 4~1996 3 27)『新世紀エヴァンゲリオン』( TV版)

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