• Tom Kurihara

『生命と記憶のパラドクス』-福岡ハカセ、66の小さな発見-〜教養エッセイ集の見本〜

 本書は66のエッセイ集から成り立っているが、理系分野の難解な用語はない。そもそもこれらは『文藝春秋』の連載記事を再編集したものだ。一般読者を想定して書かれているから、3ページ程度のエッセイはさらっと読める。

 著者は福岡伸一氏で分子生物学者を専門としている青山学院大学教授だ。テレビ等にも出演し、本人の名前がクイズになるほど著名である。ベストセラー『生物と無生物の間』以外にも著書が多い。

 それにしても、文章はユニークで最後のオチまで秀逸だ。そして、著書を読めばすぐ分かるのだが、とにかく読み手を惹きつける文章で、しっとりと終わる文章もあれば、落語のオチのような面白さもある。前書きや後書き、表紙を含めて構成が練られている。ただ、タイトルも含めて文庫本化するために無理に入れ込んだ感はあるが、それは仕方のないことなのだろう。

 サブタイトルに「小さな」とあるが、特に高校生には学んで欲しい「大きな」教養が含まれている。自分の専門分野に関してこれだけ読み応えがある文章を書けたら幸せだろうなと思う。



※参考文献

福岡伸一、(2015 3 10)、『生命と記憶のパラドクス -福岡ハカセ、66の小さな発見-』文藝春秋

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