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『雲の向こう、約束の場所』~偉才の脚本:異空間の再会~

  • Writer: Tom
    Tom
  • Feb 23, 2022
  • 2 min read

 新海誠監督作品『天気の子』『君の名は』『ほしのこえ』を鑑賞してきた。今作の『雲の向こう、約束の場所』もまた新海ワールドが広がっている。彼の恋愛観や世界観、演出や構成などの中核となっている原点がここにある。なぜならこれが深海誠監督にとって初の長編アニメーションであったからだ。ただ、体調不良の中、ベッドで鑑賞したせいなのかもしれないと思った。映画終了後の心の第一声は「なんだかしんどい映画」だった。複雑な後味と多少の疲労感を残すのである。


  ※以下、映画の本編のネタバレあり。


 それは、監督の才気溢れる脚本に起因するものだろう。特に、独特の世界観と繊細に練り込まれた展開を追うだけで一苦労だ。「連合軍・ユニオン軍」「ウィルタ解放戦線」「ユニオンの塔」などの独自の用語を理解しつつ、行間を埋めるように伏線を回収しなければいけない。特に、「平行世界」に関しては、この世界の起こりうる出来事の可能性であり、予感や予期されるものと定義されているが、「蝦夷」の書き換えられた世界の詳細はない。おそらくすべてを詳細にしないいことで、作品のテーマを単純にするということなのだろう。

 しかし、どうして2人はこうも結ばれないのだろうか。この映画の視聴後に気分が重たく感じるのは、サユリが平行宇宙の長い孤独の中で見つけたヒロキへの想い、そしてヒロキが世界よりもサユリを選ぶほどの一途な想い、それらが交錯しないままエンディングを迎えてしまうからだ。本作の魅力は、平行宇宙と現実という異空間を超えた2人の再開であるにもかかわらず、サユリが最後に夢から醒めるとそれまでの気持ちが思い出せないという、物語のテーマと最後の出口で大きな矛盾が生じているのだ。そもそも冒頭のシーンを思い起こせば、結末は暗示させられているわけで、ハッピーエンドのボイミーツガールとは明確に異なることが前提だ。監督は、最初から〝数多の映画で語られ尽くされた愛の歌”を作るつもりはなかったのだろう。

 叶えられないあの時の恋の約束と青春の恋物語。それを空間と「世界系」の2つの視点から描いたものであると考えるが、難解な設定のために解釈も多岐に渡るのでないか。逆説的だが、それが新海誠監督の魅力でもあるだろう。2人の異空間の再開は鳥肌ものである。


※参考文献

新海誠、(2002・11・20)『雲の向こう、約束の場所』、コミックス・ウエーブ

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