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『18歳からの格差論』〜すべての人に同じ土俵の提供を〜

 日本の社会問題の根本にあるものは「格差社会」だろう。昭和の層中流階級社会はバブル崩壊を機に長い不景気に入った。成果・能力主義や人件費の削減にによる非正規雇用が広がった。その流れの中で、AI問題(AIと人間が共存の模索)や民主主義の問題(熟議によるプロセスを重視した民主主義の見直し)がある。現在は、格差社会は教育格差、健康格差、情報格差、所得格差など細分化されて議論されている。そうした問題を改めて再認識しようと手に取ったのが本書である。

 著者の井出英作は1972年生まれで、東京大学大学院を卒業後、日本銀行奇乳研究所、その後、横浜国立大学等を経て、慶應義塾大学教授で、財政経済学と財政経済史の専門家である(2016年現在)。「18歳」というタイトル通り、本文は非常に短く、筆者の深い見識をできるだけ噛み砕いて説明していkる。経済の専門用語が多少含まれるものの、筆者が本当に伝えたい理論とその背景にある熱い気持ちが伝わってくる。

 本書の肝はその筆者の情熱である。例えば、生活保護受給者。そのほとんどは正当な理由で受け取っているが、羞恥心がありながらやむを得ない胸の内があるということ。筆者はそれを「困っている人を助けてあげるという、この人間の切ないまでの温かさが、時には、限りなく残酷なものである」と表現ている。そして「運の悪い人が人間らしくいき、(中略)競争に参加し、たとえそれに敗れても勝者に惜しみのない拍手を送ることができる社会を目指す」ために、「弱者の幸福のためではなく、人間の幸福を願うことを追求する」と訴えている。

 経済理論に興味がある人には学術的にも魅力的だろう。ただ私には、筆者が主張する政策、中高所得者にも重く課税し同時に全員が受益者になることで分断社会を解消できるという理論がどれほど妥当性があるかをエビデンスや明確な理論で立証または反駁する自信がない。しかし、人生の選択や勝負において誰もがある一定の条件に達しているべきであるという筆者の政治信念は私たちが普段見落としがちな視点であることは間違いない。したがって、本書を読むことでセーフティーネットが誰にとっても温かみのある制度で、個々の努力次第で人生が決まるところに本当の「自己責任」の意味を理解できると私は考える。

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