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『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』〜英語学習は不滅だ〜

 AIが人間の力を借りることなくその能力を超越する技術的特異点[シンギュラリティー]に到達するのが2045年であると言われている。その未来予測は世界中で大反響を呼び、AIによる人類の恩恵と損害など様々が議論がなされている。AIとは何かを正しく理解するには、まずは本書がお勧めだ。実際、教育業界最大手のベネッセコーポレーションが大学入試小論文対策に挙げている推薦図書でもある。

 新井紀子氏は国立情報研究所教授、同社会研究センター長であり、数理論理学を専門としている。2011年より始まった人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」のプロジェクトリーダーで「東ロボくん」の生みの親だ。それは2016年にMARCHに合格できるまでの偏差値を獲得したが、これによって本来の目的である現在のAI技術の限界を明確に提示した。また、来たるAI時代にはすべての子どもが教科書の文章を理解する力を身につけさせるべきだとして全国基礎的読解調査「リーディングスキルテスト」を率いている。

 本書がベストセラーとして多くの人に読まれている所以は、上記の筆者の研究実績を、ー特に「東ロボくん」が有名であるがー、平素かつ緻密に展開しているからだろう。上記のプロフィールにある研究内容は、まさに今、多くの人がひときわ注目している分野であり、それがまるで方程式を解いているかのように「読解力」という項を代入して記述されている。特に教育者にとっては、映画のような妄想的な未来を盲目的に信仰することの脆さを知り、冷静に今後の展望を描くマイルストーンにもなるだろう。

 英語教育(語学指導)不要論は一旦棚上げのようである。0と1を基準に作動するコンピューターはどこまでいっても「意味」を理解しない。不規則で文法的に正しくない言葉を理解し、言外の意味や暗黙の了解と正しく捉えることは無理だ。ましてや、現実世界の無限に広がっている状況と条件を確実に把握できない(いわゆるフレーム問題)の解決はブレイクスルーが起きない限り不可能であることが分かった。英語学習の終焉はシンギュラリティとほぼ同義なのだろう。このように、一般的なAIに関する社会問題から教育論、言語習得論まで、非常に多くの多くのことを示唆している名著である。



※参考文献

新井紀子、(2018 2 15)、『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』東洋経済

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