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令和5年度(2023年)度共通テスト R/L講評

Tom

 令和5年度の共通テストのリーディング及びリスニングの講評をする。本年度の平均点は、リーディングが53.8点で昨年度より7.9点低く、リスニングは62.3点で2.9点高かった。

 リーディングもリスニングも共通テスト独特の傾向があり、トリッキーな問題も複数含まれている。例年通り「入試英語」という範疇の中でも癖のある問題だ。私立大を第一志望としている受験生は、共通テストは受験の最初の関門であって、あえて照準を当てないことも戦略的にあり得るだろう。語彙も文法などのレベルは比較的抑えられているものの、得点調整を狙った難問・悪問が出題される傾向は続きそうだ。特にリーディングに関しては、場面設定だけが変わった類似の問題を80分解かせることに違和感を感じる。日常的な場面、すなわち使える英語の力を試すことに意識が強く向き過ぎている。以前のセンター試験のような文法・構文及び論理を測る良問が少ない。センター試験時代は、文法・構文が重視され、アカデミックな内容・問題形式から実用的ではない印象もあったが、共通テスト問題を通して振り返ると「良問」であったと言わざるを得ない。それぐらい共通テスト全体が「悪問」であるように感じる。入試改革の骨抜き状態であるこことを認め、全体的な質・量の改善を求めたい。

 以下は各問題の分析・講評である。

【リーディング】

<第1問A:鑑賞会の申込書>

 昨年度話題となった写真付きの表がなくなり、シンプルなハンドアウトに変更となった。

<第1問B:英語サマーキャンプのお知らせ>

 問1・問2が複数の根拠を必要としつつ、選択肢が簡潔な要約となっている良問だった。

<第2問A:最新技術を搭載したスニーカーの広告>

 一部読みにくい箇所があり、すべての情報を正確に掴むことに苦労する受験生も多かっただろう。特に、問2はリード文も解答の根拠となるため、受験生はこの部分を軽視することがなくなるだろう。

<第2問B:通学チャレンジ・キャンペーン>

 問4での正解の選択肢は、”could have+Vp.p.”で「過去の可能性に言及する表現」で、間接的な文法問題を兼ねている。

<第3問A:キャンプに関するニュースレター>

 例年通り平素な問題で得点していきたいところ。

<第3問B:”adventure room”の作成>

 問1の出来事並び替え問題がストーリーをもとに巧妙にパラフレーズされているため、難度が高いだろう。

<第4問:暗記に関する勉強法>

 受験生には親しみやすい内容であった。ただし、2つの文章、合計7パラグラフに対し解答の根拠が後半の第1パラグラフに4問も集中している。トリッキーとまでは言わないが、明らかに偏重で受験生には優しくない。

<第5問:卓球からの教訓>

 従来の自伝から、エッセイになったとこりに工夫が見られた。歴史的な内容に比べ語彙が平素になったが、代わりに登場人物の心情を推し量る問題が出題されている。出来事並び替え問題の選択肢の一部は内容と不一致であるため、その部分は解きやすくなった。問題は読みやすいが状況・心理描写を正確に読み取ることに苦労した受験生も多いだろう。

<第6問A:収集に関する論説文>

 アカデミックな内容を扱ったことには変化がなかったが、スライドからノートの形式になった。メモを活用しながら必要な情報を検索すれば良いが、未知の語彙の推測、不定冠詞や修辞疑問文等の文法及び内容を踏まえたパラフレーズをする必要があり、受験生には若干、難しく感じただろう。

<第6問B:地球最強の生物「クマムシ」>

 専門用語が多いが、それを知っている生徒はほぼ皆無であろう。(本文の一部は『MY WAY III』(三省堂)で扱われている内容と同じだった。)しかし、補足説明があるので問題はない。むしろそうした専門用語を理解する力を測っているとみるべきだろう。昨年度は、文章全体を用語に従った分類・整理したうえで解答の根拠も比較・検討するため、非常に難度が高かったが、今回はその検索する範囲が限定的なのでより早くに処理できるだろう。


◎リーディング総評

 要約問題、比較・検討するなど出題意図に沿った問題となっている。リード文と絡めた問題や、解答根拠が前半に集中する問題など、トリッキーな問題も含まれている。基本的に語彙力レベルは低く、英文が長いため速読力が試されている。ある程度のトレーニンが必要だ。



【リスニング】

<第1問A::短い発話>

 第1問を除きすべての部分が解答根拠となっている。できれば全問正解したい。

<第1問B:イラスト選択>

 第6問は”one”=“cow”であることがポイントであるが、正解には辿り着けそう。平素な問題が続いた。

<第2問A:イラスト選択>

 消去法や単純な計算問題を含む共通テストにありがちな問題であった。特に、第9問は言い換えではなく消去法でないと選べない悪問である。

<第3問:短い会話>

 状況を把握すれば、解答の根拠は部分的なので解答しやすかった。ただし、第17問は、選択肢の”adopt”を先に読んでおかないと不意をつかれるだろう。

<第4問A:図表空所補充>

 昨年度出題されたイラスト並べ替え問題がなくなり、代わりに図表完成問題に戻った。解答根拠が不規則に流れるので集中力が必要だ。後半も今までにない条件設定で不意を食らった受験生も多かっただろう。ただし、英文自体は平素である。

<第4問B:図表完成>

 条件に合わないものを表に「X」で記入していけば比較的容易に解答できただろう。ただし、正解は4番なので辛抱する心理的負担がある。

<第5問:講義>

 講義の内容が「象」に関する問題で、直接的な統計問題ではないところにトピックの工夫を感じた。出題傾向(解答根拠の箇所)も例年通りで言い換え表現も比較的選びやすかった。ただし、第33問は明確な解答根拠がなく、問題文通り「次の図から読み取れる情報と講義全体の内容」から選ぶ難問だった。消去法も用いながら妥当な選択肢を選ぶには高いリーディング力も求められている。

<第6問A:長い会話文>

 会話全体の要約及び会話の流れを理解できていれば正解できる良問である。あらかじめ選択肢を読んでいれば難しい問題ではない。

<第6問B:主張把握>

 例年は単純に賛否の人数を問うものであったが、テーマに関する最終的立場を選ぶ問題に工夫されていた。”Mary”は途中で意見が変化することに気づく必要もある。4人の会話をメモで聞き比べる問題は他の資格試験にもなく、非現実的でかなり難しい。悪問である。

◎リスニング総評

 アメリカ人以外にもイギリス人や日本人が話者となる問題は傾向が変わらない。難問・悪問は含まれるものの、トピックによる工夫も見られた。普段は精聴、すなわちディクテーションとシャドーウィング等のトレーニングを詰めばある程度の得点は期待できるだろう。重複するイラスト問題は改善すべきだと思うが、いくつかの難問・悪問を除いても問題の質に改善が見られた。

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