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共通テスト(英語 R/L)の分析と講評

 2020年度からセンター試験が廃止され、新しく共通テストとして生まれ変わった。そして、試行問題を含めた数回の問題分析の結果、かなり癖のあることが明らかになってきた。本稿では今後の対策や予想を含めて講評していく。

 センター試験では前半に発音・アクセント問題から文法・構文問題等の知識を問う問題が出題されたが、共通テストではすべて長文問題となった。設問を解くために知識を問うことはあるが配点は僅かである。また、リスニングテストの配点はリーディング同様の100点となった。スクリプト量もかなりあって聞き応え十分である。さらに問題は、新学習指導要領にある3観点のうち、特に「思考力・判断力・表現力」を強く意識されて作成されている。

 もちろんこれらは英語を指導する立場としては歓迎すべき要素だ。場面設定はすべて日常的となっていて、従来の「入試英語」にはあまりなかった魅力がある。また、アメリカ英語以外にイギリス英語の発音や言い回し、非ネイティヴの英語(具体的には日本人の英語)の登場はリアリティーがあって現場の指導にも有効である。

 しかし、擁護するのもここまでのようだ。結局は、先ほどの観点別や「受験英語」を脱却しようとして設問を無理矢理こねくり回している煩雑な問題になっているからだ。理由は複数ある。第一に、複数の資料を比較・検討し選択肢を吟味する、または複数の箇所または全体を通して確実に断言できる選択肢を選ぶ問題が主になっている。本文の内容を言い換えた別の表現が正解の選択肢であるが、出題者としては別の言い方で「表現できる」のとのが作成者の意図のようである。ただなのは、その言い換えの距離感が非常に遠すぎて問題が難化していると言える。第二に、出題の形式が毎年僅かに変化していくこともやっかいである。そのために、意表を突いた出題や想定外の問題に遭遇する。あらかじめ予定していた時間配分や解放が当てにならない。公平性を保ち、その場での判断力等を測定しようとしているのだろうが、受験生・指導者の精神的な負担は大きい。第三に、日常生活で使用することを意識し過ぎた場面設定になっていて、文学的思考やロジックによる思考(例えば、物語を読む視点、ロジカルに読み進める能力等)が軽視されている。最後に、全国の平均点を抑えるために、トリッキーで複雑な問題が散見され、純粋な英語力を測定できていないのではない。共通テスト特有のひっかけ問題が散見され、初見では満点を取ることはほぼ不可能だ。センター試験が高得点だからといって英語力が高いとは断言できないところは皮肉だ。むしろ「センター試験英語」を重視しすぎると国公立大学や私立大学の入試では従来通りの出題に対応できない可能性もある。

 ただ、勉強方法は音読やディクテーション(「DLOS勉強法」)など王道を進むのが良い。「センター試験英語」とはいっても素材の英語が特殊ではなく、むしろ教科書的なフォーマルな英語だ。英語を英語の語順で理解する訓練を積むことである。英語は英語なのだ。

 また、解法もすべての問題で基本的に同じである。リーディングではリード文で状況を理解し、設問を部分問題と全体問題に分け、本文の速読をしたのちに選択肢を一つずつ吟味する。リスニングは「聞こえれば解ける」ことを前提に、精聴と速聴のトレーニングをしながら問題形式に慣れていけば良い。

 それしても共通テストは概して悪問だ。センター試験の英語の方がはるかの良問であった。文部科学省やセンター試験の出題者の意図も分からなくもないが、とにかく問題をこねくり回している。英検と比べても質的に相当劣っていると言わざるを得ない。大学入試改革も骨抜きになってしまったのだから、これならいっそのこと潔く「センター試験」に戻してしまえば良いと私は思っている。

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