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新型コロナウイルスの論点整理 2022

 今、主な世界で議論されている問題と国内の喫緊の社会問題は、新型コロナウイルス感染拡大、AIと人類の共存、そして民主主義の在り方だ。それは個々が独立して存在しているのではなく、むしろ互いに共鳴しているようにみえる。新型コロナウイルス感染拡大は非接触型生活環境の整備、すなわちICTの技術進歩に拍車を掛け、一方で、広がる経済格差が民主主義の見直しを迫っているように考えられるからだ。大堀精一の言葉を借りれば、今こそ「日常の中の柔らかな論理」を駆使するときである。まずはこの3つの関連を整理しよう。

 新型コロナウイルは人や物などが急速に移動するグローバル化という特性によって世界中に拡大したが、この非常事態によって社会が抱えていた問題がはっきりと浮き彫りになった。実際、国家のボーダレスな脅威に対するボーダフルな対応は後手になっている。また、社会や日常生活においても甚大な影響を与え、個人レベルでも負の側面を生んでいる。安易に他者を攻撃してしまう「自粛警察」「コロナ差別」はその一例で、他者への適切な想像力の欠如という社会問題が起こっている。逆に、コロナ禍による大気汚染の改善のような前向きな側面を捉える議論もある。別の視点として、ウィズコロナの観点から、テレワークにおける住まいの在り方や家庭での夫婦の役割の在り方(ジェンダー論)にまで深くなっている。

 コンピューターによる環境整備が進むことで、AI論は相変わらずホットな話題である。この議論の出発点は根深い「格差社会」に端を発する「AI vs 人間」、言い換えればAIの弱みを人間が補うという論調から、AIを含めた新しいデジタル環境を人間がどのように活用し、その恩恵を享受するかという構図に移行している。アーキテクチャ、エコーチェンバー、フィルターバブルといった新しい概念を踏まえ、プライバシーやセキュリティーを政治や医学などの観点からAIとの関わり方を吟味する必要がある。また、観光や言語といった分野でのAIの活用法を模索し、人間とAIの共存の可能性を広げることが求められている。

 根底となっている問題は、グローバルな問題をグローバルに対応できていないことである。例えば、WHOは新型コロナウイルスの対応や原因究明に決定的な役割を果たせていないが、同様のことはロシアのウクライナ侵攻にも当てはまる。国連は法的拘束力のない批難決議や声明ばかりで実質的な効力はほぼないに等しく、拒否権の乱発が示すようにその意思決定に大きな欠陥を持っている。世界的な統治機構が武力を含めて権力を集中させない限り、どの国家も違反や暴力に常に晒されることになる。もちろん「私たち」が絶対に正しいという保証はないが、そのために「わたしたち」の組織を適正に監視しあうようなシステムの構築を急がねばならない。理想がだけが独り歩きをすることに慣れてしまい、それが達成されることがなければ、それは無法地帯の野生の闘争状態と同じである。マイノリティーや力の弱いものはさらに絶望し、権力への無謀な暴挙に及ぶこともあれば、祖先が幾多の血を流して獲得した選挙権を安易に放棄することに繋るだろう。近年、「熟議民主制・闘技民主制」や「ロトクラシー」「ジッバー制度」「ボルダー制度」といった考え方が議論になっているのはそうした背景があるのだろうと考えられる。従って私は、グローバリゼーションの課題は文字通り世界的な視野で対処しなければならないと考えている。






















(キャンパス内の感染予防を呼び掛ける立て看板)


※参考文献

大堀精一、(2018 5 10)、『小論文の書き方と考え方』講談社選書メチエ

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