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第10回 夏の教育セミナー 2023〜生成AI時代の教育とは〜

夏の教育セミナーは新型コロナウイルス感染防止の観点からオンラインが続いていたが、4年ぶりの会場実施となった。ただ、私は諸事情で会場に参加できず、目の前で感じられる講師の熱弁や分科会の模擬授業を体験する機会などを得られなかった。ただ、オンラインでも東京及び大阪での実施を録画再生してもらえるハイブリッド形式であったのは有り難かった。

 基調講演のタイトルは「教育改革の最新の動きを知る」だが、現行の共通テスト及び新課程対応共通テストの概要説明が中心であった。その中でも目を引いたのは、さらっと「多様な入学志願者を適切に評価する問題の作成」について具体的には、あらゆる学力層に対応できる問題作成に取り組むと述べていた。これは上位層に対して平均点を下げるために、よりトリッキーな問題を出題することを暗示しているように感じた。また、令和7年度実施の共通テストの受験科目や試験時間等の大ききな変更点も提示された。「情報」という科目の追加、国語の近現代文の追加・試験時間変更、数学(2)は数学Cまでの内容も含むこと、理科の科目先約のスリム化、社会科での組み合わせなどである。文部科学省はAI時代に必要な学力試験となるように高大接続改革を目指している。それに合わせるように、「探求」「情報」「英語(東進英語科)」の特別講演も実施された。こちらは残念ながらよくある一般的な概論・理想論だった。

 安河内哲也の特別講演(分科会:英語)は今年も絶品だった。安河内氏は大学入試改革で4技能試験型に賛成の立場である著名な論者の一人だ。前半はそれを実際にどのように(それも予備校講師として!)授業展開しているかを実演・解説してくれた。今年も教材準備や現状の業務の中で自分流にどのようにアレンジできるか、ー大阪の特別講演の武藤一也先生のCELTA式 CCQsなども含めてー参考になるところが多かった。特に、後半はChatGPTを使った教材作成術を伝授してくださった。

 ただ、全体的に言えることであるが、文部科学省が提唱する理念は正論であるけれど、その具体策がいつもちぐはぐである。例えば、英語は4技能を高めてこその英語力なのに、そうした議論は封じ込まれて骨抜きにされたままだ。観点別評価は矛盾や無理が多く、現場に多大な負担が掛かっている。総合的な学習の時間と受験対策(特に共通テスト以外の個別試験等の筆記試験)とは相性が悪い。こうした無理や矛盾を抱えたまま、そして共通テストの迷走を見ながら私は何ができるのだろうとより深刻に考えてしまう。

※参考文献

第10回 夏の教育セミナー 2023(オンライン)、日本教育新聞・株式会社ナガセ

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