top of page
  • Tom

3度目の緊急事態宣言に思うこと

 早稲田大学の総長である、田中愛治は2020年度の入学式辞(実際には9月にオンライン)で「未知の問題に対する解決策を自分の頭で考える力」を「たくましい知性」、「国籍・人種・言語・宗教・文化・信条・障がい・性別・性的指向などが自分と異なる人を受け入れ、理解し、敬意を表すことができる感性」を「しなやかな感性」と呼んでいると述べている。新型コロナウイルスの終息が見えない時代により求められる力と感性であろう。

 「受験勉強だけの1年間の後に、友達をつくることするできない」「ようやく入寮できたのは(入学後4ヶ月後の)9月」「(中国出身の留学生は)中国人同士でも日本語を話した」「留学を諦めるという判断をするしかなかった」。これらは第2回の緊急事態宣言下の2月の発言である。学生生活という青春から色彩が消えていった虚無感や失望感が伺える。

 こうした現場や日常生活の声は届くことはないだろう。3度目の緊急事態宣言が発令された。この後に及んで東京オリンピック・パラリンピックを平常開催しようとしている。蔓延防止重点措置と緊急事態宣言の区別も明確でないまま局面は進みんでいる。長いコロナ疲れで人々の我慢も怒りに変わり、すさんだ言動がメディアを賑わすこともある。しかし、それは氷山の一角にすぎないのだろう。変種ウイルスが出現し、想定外の事態を迎えているのも事実であり、責任を背負わず非難するだけなら誰でもできるだろう。中身のあるロジックで建設的な議論をしていきたい。

 いっそのこと東京オリンピック・パラリンピックは無観客試合でオンライン開催してはどうだろうか。緊急事態宣言も徹底的に行い、期間ではなく再び感染拡大をしない数値目標立てるべきだ。徹底的な都市封鎖、一斉休校、テレワーク等を導入し、相応の補償とセットにして行う。そうでないと世界規模での集団免疫が出来るまで延々と同じことを繰り返すことになるだろう。苦しい状況の中だからこそ、オンラインの「平和の祭典」であっても良い。「しなやかな感性」があれば、それを「たくましい知性」に変換してして困難を乗り越えることができると提案したい。



※参考文献

早稲田大学校友会、(2020・12)『早稲田学報』

早稲田大学校友会、(2021・2)『早稲田学報』

5 views

Recent Posts

See All

2021年度の大学入試の小論文で最も出題の多かった著者が伊藤亜紗である。その中で最も引用されることが多いのは『「うつわ」的利他』である。そこで、再頻出の問題の全文を目に通したいと思い本書を手に取った。 著者は東京工芸大学リベラルアーツ研究教育院教授で、専門は美学、現代アートではサントリー賞を受賞しており、近年は「利他」を研究テーマにしている。本書では、「利他的合理主義」、「効率的利他主義」の疑義か

日本の社会問題の根本にあるものは「格差社会」だろう。昭和の層中流階級社会はバブル崩壊を機に長い不景気に入った。成果・能力主義や人件費の削減にによる非正規雇用が広がった。その流れの中で、AI問題(AIと人間が共存の模索)や民主主義の問題(熟議によるプロセスを重視した民主主義の見直し)がある。現在は、格差社会は教育格差、健康格差、情報格差、所得格差など細分化されて議論されている。そうした問題を改めて再

選挙権の獲得の歴史を考えると、人類はこれまでの参政権を得るために多くの血流と失われた尊い命を失った。したがって、投票日に選挙会場に行かないことは歴史軽視でもあり、行使しなければいけない大事な権利なのである。そして、そのより根源的な政治の仕組みや、概念、哲学、日常との関わりを網羅的に学べるのが『自分ごとの政治学』である。 著者は1975年大阪生まれで、現在は北海道大学大学院法学研究科教授。専門は南ア

Featured Posts

Categories

Archives
bottom of page