18歳選挙権へ
選挙権年齢が20歳から18歳に引き下げられた。およそ70年ぶりの拡大で有権者数がおよそ240万人増えることになる。次の7月の参院選が初めての選挙となり、その投票率は注目されるところだ。
18歳という年齢は、高等学校の卒業年齢と同じである。在学中に選挙権を持つことも可能になるということだ。つまり、在学中に政治活動をすることもできる。これは、教職員が法律で政治活動の制限がある中で選挙教育をする一方で、生徒は学校生活で得た知識や技術を政治活動という実戦に移せるということになる。この微妙な「十字路」で何が起こるかは期待と不安があるところだ。もちろん、社会の「中心」で活躍する18歳と、学校の塀の「外側」にいる学生の化学反応も興味深い。
しかし、私はそれ以上のある危惧を抱えている。それは、該当有権者の政治的無関心はさることながら、彼らは特に自分の声を持たない世代である。例えば、社会学者の宮台真司のいう「仲間以外はみな風景」的な共感を基盤とした脆弱な集団構成だ。今は良いかもしれない。しかし、これが突然、インターネット上で彼らが好むような人物が登場し、感情的に祭り上げられたとき、日本は誤った舵を取ってしまう可能性がある。歴史は証明している。良識を感情が覆った後の悲劇は繰り返されてしまうことを。
君主に向かって忠誠を誓い、仲間と命をかけて団結する。その気持ちよさは「右翼」の思想の根底にある気持ちよさだ。本物の「右翼」になれるか。それとも「狂気」と揶揄されるのか。その時代はそれほど遠くないように思える。
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