• Tom Kurihara

公共施設と教育的役割


 現在の日本は、急激な変化を伴った国際競争社会、情報化社会にある。年功序列や終身雇用制度が崩壊し、効率を第一にした実力主義が雇用の中心となっている。この雇用制度の変化は、児童生徒が社会の一員として社会に貢献に寄与するために、絶えず自己研鑽をすることが求められており、教師にも同様のことが当てはまることが中央教育審議会の答申で述べられている。さらに、生活水準や医療技術が高まるに従って、平均寿命も延び、退職後の人生の在り方を見つめることが重要となってきた。こうした現状から、個々が生涯学習によって、自己実現を図るとともに、豊かな人生を送る視点が重要となっており、図書館等の社会教育施設はますます重要な役割を果たすと考えられる。

 私が訪問したのは、新宿区立大久保図書館である。そこで最も注目したのが、入口においてあった生涯学習に関するパンフレットの棚である。『都立学校公開講座』から『首都大学東京オープンユニバーシティー』『検察審査会Q&A』まで多彩な分野のパンフレットが置かれており、大きく3つのカテゴリーに分類できる。第一に、パンフレットを通して、図書館が児童生徒の学習の場を提供しているということである。新宿区立図書館が発行している『サポーターズニュース』は、子どもが絵本や紙芝居などを選んでゆったりと作品に触れられる機会を提供する活動を紹介している。第二に、児童生徒の保護者や学校周辺の地域の方々に向けて、学校の取り組みや最新の教育時事を紹介したものである。『新宿の教育』では、新宿西戸山中学校開校の記事や、学校選択制度に関する意識調査報告書まで掲載されている。第三が、高齢者を含めた成人を対象にして、学習機会の提供をしていることである。数多くの講座や、伝統工芸品や歌舞伎などの紹介や施設情報を含めたものが多数置かれていた。その中の記事で「英語多読入門講座」が紹介されていて、60代以上の高齢者の応募が殺到したということが書いてあり、地域の方々が多く利用している様子がうかがえた。

 以上を踏まえると、図書館が社会教育施設として次の2つの役割を担っていると言える。まず、生涯学習に有効な資料・情報を提供する役割である。図書館は蔵書といった資料によって、個々の興味・関心に基づいた資料・情報を選択し、主体的に学習できる機会を設けている。近年は、大久保図書館のように、インターネットによる図書館相互の検索機能や資料・情報の宅配など図書館のサービスは充実している。さらに、成人教育の観点から見ると、生涯学習を促進させる資料・情報が個々の新しい知的発見や自己の資質・能力向上のかけ橋となることが期待できる。次に、人々の交流や活動の拠点となる役割がある。公開講座の案内や図書館のサポーター活動など、図書館という場所が中心となって人々が集まり、交流を深めながら学んでいく場所になる。人々が図書館に出向くことで生涯学習の契機・拠点となることが求められている。公共図書館は、私たちが生涯に渡って学ぶことの可能性を無限大に開いていると言える。

 資料・情報の提供や、人々の交流や活動の拠点となる役割を果たすことは、公民館等の社会教育施設も同様である。したがって、学校が社会教育施設の利用方法及び可能性を児童生徒に実体験の中で学ばせるとともに、社会教育施設と連携・協働していくことが大切である。これからの社会教育施設は、人々の社会貢献や自己実現といった生涯学習において、ますます重要な役割を果たしていくと考えられる。

※参考文献

Tom (2011) GHF'03 「誰かが一言」

中央教育審議会『今後の教員養成・免許制度の在り方について(答申)』2006年


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