top of page
  • Tom

うるさい「騒音」問題


 除夜の鐘は大晦日から新年を跨いで108回突かれる。深夜の「ご~ん」という音を聴きながら気持ちを新たにする人も多いだろう。ところが、その厳かな音を「騒音」だとクレームを入れる人がいる。「寺の周辺に住むようになった新しい住民にも対応する必要があり、いろいろな形を模索する時代」らしい。

 保育施設の子どもの声も騒音だとして自治体に苦情を出す人がいる。実際、主要146自治体中の109自治体では何らかの苦情を受けているという。およそ75%である。地域社会の顔の見えない分断がこのような事態を招いているという声がある。なんと「騒音」に不寛容な時代になってしまったのだろうか。

 人は音を「共有」できないと不快に感じるのだろう。例えば、電車で友達同士が会話を楽しむことに誰も意義を唱えないが、携帯電話をしているビジネスパーソンには厳しい目が向けられる。集団での立ち位置が重要視される日本独特の歴史的文化である。

 それが、悪い意味で表面化したのがこの「騒音」問題だ。地域の分断や過度な権利主張などが遠因である。自分とは関係のない私的な領域において、子どもの声までが「騒音」となるかどうかは、歪んだ社会の我々への「警告」である。

※参考文献

読売新聞、(2016,12,29)


7 views

Recent Posts

See All

『世界一しあわせなフィンランド人は幸福を追い求めない』〜「人生の意味」をアカデミックに考える〜

フィンランドは世界幸福度ランキングで2年連続(2018年・2019年)で世界一位にランクインした。それ以前にも、フィンランドはフィンランド・メソッドで世界的な注目を集めていたため、家族が紹介してくれた。目次を眺めると、1部「人間はなぜ人生に意味を求めるか」、2部「人生の意味とはー新時代の視点」、3部「より意味深い人生のために」となっている。 この本の主題は、人生に意味に関する考察だ。そしてもしあな

「完璧=自己ベスト」

ストレスコーピングやメンタルヘルスの観点からすると「完璧」を求めることはしばしば自身の負担になることが多い。精神疾患を患ってしまう人はこの傾向が強く、また完璧を求めて自分を追い詰めてしまうこともある。ただ、その「完璧」を求めることが良い方向に進むこともあるらしい。 自転車競技の河野翔輝選手は、早稲田大学在学中にプロチームに所属し、全日本選手権トラックなど、複数のタイトルを獲得している。今後の目標は

『夜と霧』(新版)〜「生きる意味」のコペルニクス的転換〜

人は辛い状況に置かれた時に、その因果関係を追求する傾向があるのだと思う。例えば、困っている従業員は「なぜこんな会社のために働いているんだろう」と考える。個人的には、言うまでもなくあのアウシュビッツの強制収容所に比べたら比較にならないほど幸運であるが、それでも「なぜ生きているのだろう」と考えることが多い。従って本著は「生きる意味」を当事者として読めたように感じる。 『夜と霧』の主人公は、第二次世界大

Featured Posts

Categories

Archives
bottom of page