教員のTOEIC問題
読売新聞によると、今年度受験した京都府(京都市除く)の中学校教員74人にTOEICを受験させたところ、730点(英検準1級相当)以上は16人だったという。そのうち14人は500点に届かず、最低点は280点だ。府教委は、教員の多忙を考慮しながらも環境体制の構築を考えるそうである。
しかし、このTOEICという試験の英語は、中学校の基礎的な英語と質量ともにかなり隔たりがある。実際、その内容は読み・書きに特化したビジネス英語で、受動型英語の能力を測定するものである。だから、一概にこの点数が低いからといって総合的な英語力が乏しいとは言えないのである。
問題の本質の1つは、府教委の言うように教員の多忙感や労働環境だろう。高校の教員は教員免許を所持し、教員採用試験という選抜試験に合格しているだから、専門的知識はある。さらに勉強する時間が欲しいと思っている方も多いのではないか。公表された数値を批判的に扱うよりも建設的な議論に発展して欲しいと思う。
ただし、英語を専門職とするならば、ある程度の能力は求められる。環境等が改善されたならば、あとは使命感や誇りの問題ではないだろうか。
※参考文献
読売新聞、2017.2.28、「中学英語教員、達成2割…TOEIC目標」
Recent Posts
See All大堀精一は、「学研・進学情報」を監修し、小論文入試問題分析プロジェクトチーム編集長も兼任している、まさに小論文のスペシャリストである。『小論文 書き方と考え方』の著者で、私がこの分野で最も尊敬している方である。その方の新書が発売されたので、早速購入して読んでみた。...
夏の教育セミナーは新型コロナウイルス感染防止の観点からオンラインが続いていたが、4年ぶりの会場実施となった。ただ、私は諸事情で会場に参加できず、目の前で感じられる講師の熱弁や分科会の模擬授業を体験する機会などを得られなかった。ただ、オンラインでも東京及び大阪での実施を録画再...
第9回夏の教育セミナー(日本教育新聞・株式会社ナガセ主催)が今年もオンラインで行われた。例年以上に講座が豊富で、収穫が多く勉強になった。今年の目玉は、高等学校の新学習指導要領の施行に伴い、令和7年度の共通テストの内容とそれを考慮した授業改善だろう。特に、指導と評価の一体化の...