AO入試の罪
AO入試とは、簡単に言えば学校長の承認の不要な自己推薦である。従来の過激な知識偏重から、「生きる力」に基づいた表現する力等を重視に転換したものだ。だから、小論文や面接、プレゼンテーションが中心になる。一方で、AO入試が日本の大学教育のレベルを落としているという論調がある。残念ながらそれはある程度正しいと言わざるを得ない。そこには二極化する大学の必死な競争原理が働いているからである。
もともとは1990年に慶應義塾大学が始めたもので、年を追うごとに徐々に広がっていった。実際の試験内容も偏差値上位校の課題は深く広い見識に十分な動機が求められる。AO入試は学力試験の前に行われるため、早い学校では8月に合格発表を出すところもある。ここがポイントなのである。
経営危機にある人気のない下位大学等は、早めに学生に合格を出して囲い込んでしまう、いわゆる「青田買い」を行なっているが現実だ。生徒も夏頃に学力的な展望が見えなかったり、オープンキャンパスに魅せられると、安易に学力試験を避けて早めの合格をもらおうとする。そのため、学習への動機が下がり、実際の選抜試験の学力合格基準が下がってしまうのである。大学にとって知識に囚われない個性や判断力等を図る試験が、いつの間にか生徒募集の重要な戦略になってしてしまったのである。
日本全体の学力向上を目指すなら、こうしたAO入試の制度を変えるべきだ。AO入試の合格者数は、学生の退学率や業績評価等の応じた厳格に決めたり、一定の割合で試験内容に筆記試験を組み込んでも良いだろう。健全な競争原理と学力担保の仕組みを作ることで、中等教育から初等教育へと全体の学力向上にも繋がっていくことになるだろう。
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