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未来を予想するとは?


 天気予報は科学を用いた未来予想だ。しかし、そういったいくつかの事柄を除けばこれから起こることを高確率で想定するのは難しい。科学者たちにとって「未来」はどのような過程で推測し、そこにどんな意味を見出すのだろうか。

 SF作家のK.S.ロビンソンの考察が面白い。SF作家は預言者ではなく、現在の流れを総合的に判断した上で比喩を作っているのだという。その判断方法として、例えば、物事が等加速で進む「直線外挿」、急激な上昇のあとに頭打ちになる「ロジスティック成長曲線」、正弦波(サインカーブ)やパターンの存在しない「非線形ブレークポイント」を挙げている。そして、起こりえないことは起こらないという基本原理を用いて、現在の状況と想像からなる未来像を3次元的に浮かび上がらせる。ゆえに、シンギュラリティーによるAIが人類の歴史を支配するという言説は、それ自体がAIの急激な進化の実感または恐怖を示していて、ある意味でその脅威はすでにシンギュラリティーが起こっている証しかもしれないという。

 翻訳の世界では、技術革新が目覚ましい。翻訳会社のT.ギャリーは、初期型の機械翻訳は限界にきているが、ニューラル翻訳、すなわちAIによる翻訳制度はかなり高い精度まできているという。言語で生計を立てている人間には死活問題だ。しかし、彼は日本での英語学習の帰結は人格形成と英語の持つ汎用性であると述べている。どんな優秀な計算機が普及しようが、現に子どもは数学を学んでいるのと同じ理屈だろう。

 あぁ、良かったと胸をなで下ろす英語教師は、すでにシンギュラリティーの真っ只中にいるということだろうか。ひとまず確実性の高い未来としては、歴史を俯瞰し、現在を分析することによって未来を想像する知識と技能は必須だ。どのような曲線を描こうと、人生は日々勉強であることは間違いないようである。

※参考文献

K.S.ロビンソン、(2017)、『日経サイエンス 2017 05』「知りえない未来」

T.ギャリー、(2017 914)、読売新聞「AI翻訳進化 英語教育必要?」


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