「目に見えない」恐怖
宛先不明の手紙があちこちの家に届く。開封すると中から出てきたのはドッグフードのようなもの。手紙を開けた人はその後すぐに体調がおかしくなる。高熱だからインフルエンザだろうか。しかし、数日後には息切れがし唇が青くなり、間も無く心臓が止まる。これはアメリカ炭疽菌事件から参考にした仮の話である。炭疽菌という言葉が世界中で有名になったのはこの事件だろう。
炭疽菌の芽胞が体内に入ると適切な処置をしなければものの数日で死亡してしまう。炭疽菌による最初の被害者は1979年に遡る。ロシアのある工場で機密に培養されたものが煙突から数時間放出されてしまった。最終的にプーチン政権はこの生物兵器の計画を認めたが、今でも衛生画像による施設の建設などの理由で密かに製造されている疑念が強い。実は、ロシアの炭疽菌とアメリカ炭疽菌事件のそれはDNAが一致していることを踏まえると、ロシアはさらなる脅威を持っている可能性がある。
毎年乾燥する冬になるとインフルエンザが流行する。誰しも罹患したいはないが、目に見ないからこそうがいやマスクなどで防ぐしかない。しかし、分かっているからこそワクチンも抗生物質も準備されている。しかし、もし未知のウイルスや菌などが生物兵器として使用されれば、どのように感染から身を守れば良いのかわからない。事前対策なしにはアウトブレイクになりやすいから、早急に対応するのが難しく、広がりも早い可能性があるだろう。
アメリカはロシアの生物兵器の動きを知っていながら具体的な言動を見送っている。水面下で軍事的駆け引きが行われている可能性は高く、いつ民間人が被害を被るか分からない。どの国がどのような生物兵器を作っているか可視化できずに、その致死性と脅威だけが高まっている。平和的解決策もまた目に見えないほど遠いのが残念でならない。
※参考文献
P.S.カイム / D.H.ウォーカー / R.A.ジリンスカス、(2017)、『日経サイエンス 2017 07』「再び高まる懸念 炭疽菌兵器の恐怖」
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