東京都における島嶼の高等教育の在り方 〜島嶼教育の展望と課題〜

April 1, 2019

 東京都は伊豆諸島にいくつかの都立学校を管轄している。高校で言えば、最南端の小笠原高校から小規模の神津高校まで様々だ。一般的には教員にはあまり人気がないと言われているが、逆に私は島嶼教育に魅力や可能性を感じている。その理由は主に3つある。

①小人数個別指導

島嶼は生徒数があまり多くないので、ゆとりのある個別指導が可能である。私立学校であれば生き残りを掛けた実績や特色を打ち出さねばならず、また公立の大規模校では生徒ひとり一人に丁寧な指導を割く時間は取れない。余計なプレッシャーのないゆとりのある個別指導が出来る環境にある。

②自然の豊かさ

とにかくその自然だ。青い海、白い砂浜、澄んだ空気、様々な動植物…。これらは観光的な魅力だけではなく、豊かな教育資源でもあるのだ。毎日塾に通わせるお受験では味わえない世界観がそにはある。

③地域社会への使命感・貢献性

教育の地域に貢献する程度の大きさから「やりがい」を感じることもあるだろう。狭い地域だからこそ教員としての使命感を全うする気概が持てるものだ。学校は地域の中核的存在となっている。

 一方で課題も散見される。先日、島嶼に勤務する先生方とお話しする機会があり、そこで島嶼教育の課題を教え頂いた。ここではその課題について三点述べておく。第一に、総じて高くない学力をどのように伸ばしていくかという点である。高校入試は倍率が出ることは稀なため、競争による外的動機はあまりない。第二に、教員の数や研修の数も多くなく、限られた教育資源の中でいかに指導力を高めていくかが難しい。異動の多さも相まって指導方法や校務に関する情報が深まっていかないようである。また、中堅教員の数が少ないことが苦しいという声も聞かれた。第三に、合理的な配慮が必要な生徒の指導[インクルーシーヴ教育]や生活・福祉から進路まで幅広い自立支援が充分ではないということだ。その地域の生徒を丸ごと抱えるため、環境的にすべてを整えるのは難しいという側面がある。

 ところで、島嶼教育は教育の原点と言われることがある。それは地域密着型小規模校に起因するからだ。例えば、漁が主流の地域の子どもは「英語を学んで何の意味があるのか?」という問いを持つだろう。教科指導とは何かをより見つめることになるだろう。また、生徒や保護者との繋がりも強く、人間性が求められるのは都会とは全く異なるところだ。人や地域、他校種との繋がりの中で、「開かれた教育課程」が編成されると言われる所以でもある。さらに、高校は学力によって輪切りされるために、同程度のレベルの生徒が在籍するのが普通であるが、島嶼の場合はまるごと抱えることになるので、ある意味、進学校であり進路多様校の側面を持つ。あらゆる生徒のニーズに対応する幅広い見識が求められるとともに、学校が地域の中核的施設の役割を果たすことが求められる。

 しかしながら、教員とは逆の視点、つまり親として考えたとき、子どもを島へ留学させる選択肢もあるかもしれない。豊かな自然に恵まれ、少人数授業で教育を受けることが出来るといったメリットもある。伊豆諸島の高校では「島留学」として島外からの生徒の受け入れを行なっているところもあるのだ。学校と地域の結びつきが強いことは、地域ぐるみで生徒を見守り育てるということでもある。いずれにしても、その地域の特性や強みを生かした島嶼教育の可能性は、コバルトブルーの海と同様に広がっている言えるだろう。

 

 

 

 

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