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新学習指導要領とこれからの英語教育


 私がオーストラリアへ留学した最初の頃だ。当時、英語が母国語ではない留学生は、ELICOSという学校(コース)で一定の成績を収めなけば、自分が専攻したいコース(メインストリーム)に入れなかった。だから、日常会話からディスカッション、遠足やパーティーといった授業・行事が豊富で、まさに「生きていくために必要な英語」をアクティヴィティーやプロジェクトなどを通して実用的な英語を学んでいった。だから、文法の授業なんてほぼなかったし、読解問題では文章を分析することは一切なかった。むしろカリキュラム、指導方法そして評価が4つの技能向上に向けて有機的に結びついていた。「英語はコミュニケーションのツール」という原理・原則が確固として存在しているのである。

 日本の英語教育は、「受験英語」指導から「実用英語」指導へと大きな変革が行われようとしている。その大本に当たるのが『新学習指導要領』の改定なのである。そこで、いくつかのポイントを押さえ、今後の展望を見ていこうと思う。

<新指導要領の目指すもの>

 新学習指導要領の目指すところは、外国語教育の充実として、5つの領域別目標「聞くこと」「読むこと」「話すこと(発表)」「話すこと(やり取り)」を設定した。また、高等学校に限っていうと「コミュニケーション英語I・II・III」が「英語コミュニケーションI・II・III」となった。また、「英語表現I・II」「英会話」は「論理・表現I・II・III」となる。小中高の一貫した指導と場面に応じた指導等の工夫がされることになる。これに関して、下山田教科調査官は「最終的には自律的な学習者を育てること」とし、「CAN-DOリストを授業とか関連付け」ることを奨励している。また、平木視学官は、「他教科等と連携すること」も言語活動の充実を図る方法だと述べている。いかに英語と情報を駆使し、社会を創造していくために必要な理念が提示されたのである。

<指導と評価の一体化>

指導と評価が一致していないのが現実である。コミュニケーションを重視せながらも使用教材は読解や文法に偏りがあるし、実際の定期試験ではその分野しか出ない。というより教科書に出てきた表現や内容などの確認ばかりだ。教科書を教えていて、教科書で指導するという視点で問題が作られていない。だから、まずは大学入試から変えていこうという訳だ。結局、内的動機よりも外的動機を高める方が強制力があるし、現実的なのだ。綺麗事を言っても生徒、保護者、そして学校が求めるのは大学入試の点数である事実は変わらない。だったら、大学入試に4技能が入れば嫌でも勉強するようになる。だから、制度設計から入る英語改革に賛成である。もちろん解決すべき課題もあるが、インプットに限られた大学入試の技能試験では、それだけの人材しか生まれないということなのである。今後は、英語の技能試験が英検のような汎用性の高い試験を考案、または他試験との整合性の取れた入試システムの構築が求めらているのである。「指導方法ー学校評価ー大学入試」の一体化を目指していくべきである。

<研究授業と自己研鑽>

 「授業研究」というと授業参観者が授業実施者に助言・指導する形が多いが、結局授業者は失敗しないようにと防戦一方になる。むしろ相手の長所やアイディアを見せていただく方が筋だと思っている。むしろ東京学芸大学が行なっている「対話型授業研究」のように、授業実践者が主体となって授業参観者とともに授業改善を考える理念の方が好きだ。お互いの授業は常にオープンにし、お互いにアイディアや情報などを共有できる授業研究を行なっていきたい。

 ところで、近年はグローバル化が進み、生徒の国籍は多様で、帰国子女も多くなっている。英語の教員はネイティブと同等の英語力を持つ必要はないが、英語が話せないことに何も責任を感じない教員ではまずいだろう。「私、英語しゃべれません」と言う英語教員がいるのは明らかにおかしい。転職すべきだろう。それでいて大学入試改革に反対していればさらに厄介である。私たちに今、求められていることは、将来的に困らないように常に英語力を高め、情報取集と広く教養を深めていくことである。このように、広い意味で英語教員の同僚性の問題は非常に根深いものがある。

英語でコミュニケーションを取り、社会の一員として社会に貢献出来るようになることが、英語教育の根幹だ。そして、語学を学ぶ中で自他尊重の気持ちが育ち、他国の文化や価値観などを受け入れる態度を育成したい。そんな英語改革が目前に迫っている。

※参考文献

日本英語検定協会、(2018 4)、『英語情報 2018年春号』


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