隙を見せずに議論する
小学校で英語を教えるべきか否か。ここ数年の古くて新しい問題である。来たる英語改革の中で、新指導要領による小学校の高学年での教科化および中学年での外国語活動は目玉となっている。今回は、推進派の上智大学の藤田保氏の『英語情報 2018年 秋号』』に掲載された言説から、簡潔に展望や課題を見ていこう。
「これまでの日本の英語教育は単語や文法の知識を習得することばかり」で「どのような場面で使うのかといった観点が欠けていました。」という。全く同感である。強いて言うなら「受験で必要」「文献研究」が主である。英語はコミュニケーションの道具であり、実社会で使用するために学ぶと言う大前提を確かめなければならない。
一方で、現場軽視の発言は気に掛かる。「先生方は(中略)子供たち一緒に楽しむぐらいの気持ちで臨めば良い」という発言は軽い。子どもはシビアだ。教える側に不安があれば授業に対する信頼度はすぐに無くなる。だから安易に教えることが「学級経営に効果があります」とは言えないのである。「慣れて」と上から、そしてどこかおざなりな表現は、反対派の格好の標的である。
英語改革に関して、この誌上に限らず、理念には賛同できるのだが、具体的な方法論で不安を抱えることが多い。従来の英語教育にしがみつく論者の熱もなかなかなものである。理論と実践の融合が机上の空論になることがないように、そして、安易に論破されてはいけない。小学校で英語教育を行うとの意味や方策を十分に検討していきたい。
※参考文献
日本英語検定協会、(2018 7)、『英語情報 2018年 秋号』
Recent Posts
See All大堀精一は、「学研・進学情報」を監修し、小論文入試問題分析プロジェクトチーム編集長も兼任している、まさに小論文のスペシャリストである。『小論文 書き方と考え方』の著者で、私がこの分野で最も尊敬している方である。その方の新書が発売されたので、早速購入して読んでみた。...
夏の教育セミナーは新型コロナウイルス感染防止の観点からオンラインが続いていたが、4年ぶりの会場実施となった。ただ、私は諸事情で会場に参加できず、目の前で感じられる講師の熱弁や分科会の模擬授業を体験する機会などを得られなかった。ただ、オンラインでも東京及び大阪での実施を録画再...
第9回夏の教育セミナー(日本教育新聞・株式会社ナガセ主催)が今年もオンラインで行われた。例年以上に講座が豊富で、収穫が多く勉強になった。今年の目玉は、高等学校の新学習指導要領の施行に伴い、令和7年度の共通テストの内容とそれを考慮した授業改善だろう。特に、指導と評価の一体化の...