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『上昇思考』 —幸せを感じるために大切なことー 〜感謝と夢を持つ〜

 長友佑都は言わずと知れたサッカー日本代表のサイドバックである。大学時代は応援スタンドから太鼓を叩いていたにもかかわらず、インテルというビッグクラブで活躍した選手だ。幸せは自分のこころが決めるといった類の言葉はありふれているが、一流の選手が実体験から語る言葉は貴重だ。

 エトーやスナイデルといった世界レベルのチームメイトと戦うメンタルには多くの示唆がる。苦境に立たされる前に起こり得る状況を想定し、現実を成長への糧として捉え、高みを目指すための目標や夢を描く。辛い時にはつい顔を下げてしまうが、「前向きで向上心を持った思考が出来れば、人生は大きく変わる」という。タイトルにはそういった意味が込めれている。

 第3章「感謝の心」は特に心惹かれた。長友自身の中学校での恩師の言葉や家族関係の憎しみなどが生々しく綴られている。私たちと同じような「普通の生活」から「感謝」に特別な意味を見出している。用具係という裏方に敬意を表すためにも全力でプレーをし、また日本代表として君が代を歌う時にはお世話になった方々思い浮かべるという。普段どれだけ周囲に感謝しながら生きていろだろうかと考えさせられる内容だ。

 長友は本書の最後にこうまとめている。「どんな夢でも良いから、そこに向かって走り続けることが大切だ。」夢や目標がどれだけ人を強くし、魅力を持たせるかを理解する一助にもなるだろう。

※参考文献

長友佑都、(2012・5)『上昇思考』

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