top of page

『上昇思考』 —幸せを感じるために大切なことー 〜感謝と夢を持つ〜

 長友佑都は言わずと知れたサッカー日本代表のサイドバックである。大学時代は応援スタンドから太鼓を叩いていたにもかかわらず、インテルというビッグクラブで活躍した選手だ。幸せは自分のこころが決めるといった類の言葉はありふれているが、一流の選手が実体験から語る言葉は貴重だ。

 エトーやスナイデルといった世界レベルのチームメイトと戦うメンタルには多くの示唆がる。苦境に立たされる前に起こり得る状況を想定し、現実を成長への糧として捉え、高みを目指すための目標や夢を描く。辛い時にはつい顔を下げてしまうが、「前向きで向上心を持った思考が出来れば、人生は大きく変わる」という。タイトルにはそういった意味が込めれている。

 第3章「感謝の心」は特に心惹かれた。長友自身の中学校での恩師の言葉や家族関係の憎しみなどが生々しく綴られている。私たちと同じような「普通の生活」から「感謝」に特別な意味を見出している。用具係という裏方に敬意を表すためにも全力でプレーをし、また日本代表として君が代を歌う時にはお世話になった方々思い浮かべるという。普段どれだけ周囲に感謝しながら生きていろだろうかと考えさせられる内容だ。

 長友は本書の最後にこうまとめている。「どんな夢でも良いから、そこに向かって走り続けることが大切だ。」夢や目標がどれだけ人を強くし、魅力を持たせるかを理解する一助にもなるだろう。

※参考文献

長友佑都、(2012・5)『上昇思考』

11 views

Recent Posts

See All

人は辛い状況に置かれた時に、その因果関係を追求する傾向があるのだと思う。例えば、困っている従業員は「なぜこんな会社のために働いているんだろう」と考える。個人的には、言うまでもなくあのアウシュビッツの強制収容所に比べたら比較にならないほど幸運であるが、それでも「なぜ生きているのだろう」と考えることが多い。従って本著は「生きる意味」を当事者として読めたように感じる。 『夜と霧』の主人公は、第二次世界大

2021年、早稲田大学に「国際文学館」、通称「村上春樹ライブラリー」がオープンした。校友会(卒業生)である村上氏の寄付がきっかけとなり、「文学の家」として「キャンパスのミュージアム」化に貢献している。ここには村上春樹の著書だけではなく、彼のレコードやCDのコレクションも置かれている。彼の世界観をいつかは感じてみたいとまずは短編を手に取った。 ストーリーはと短く、場面のほとんど車内のドライバーとのや

新型コロナウイル感染が世界中に拡大し、医療・経済・教育などあらゆることが変化し、多くの議論が行われている。現実問題として医療や経済などに目が向かいがちであるが、終息する気配もなく、どこが退廃的な雰囲気が醸成されているのはなぜだろうか。 大澤真幸の論考「不可能なことだけが危機を乗りこえる」(『思想としての新型コロナウイル禍』)はその中でも社会学の視点で論理的にコロナ禍を考察し、今後の展望を述べている

Featured Posts

Categories

Archives
bottom of page