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教員免許更新制は今すぐ廃止すべき

 いずれこの話はしたいと思っていたが、7月10日付けの毎日新聞でスクープとなった。教員免許更新制の廃止である。「今夏にも廃止案を中央教育審議会に示し、来年の通常国会で廃止に必要な法改正を目指す」という。当然だ。ほぼメリットが見当たらない。萩生田文部科学大臣は13日の会見で、まだ完全に廃止固定した訳ではないと述べた。

 文部科学省が企画した「#教育バトン」で、現場の苦しい叫びによって大炎上してしまったのは記憶に新しいだろう。部活動や校務分掌などの業務量はとにかく多い。教育現場でも「働き方改革」が奨励されてはいるものの現実との乖離は相当激しい。朝8時に出勤し、20時に帰って胸を撫で下ろすのが私の体感だ。定時退社、週末オフなど夢の世界。そんな多忙感の中、自己研鑽できる夏休みまで潰されては通常の業務にまで影響が出てしまう。教員免許更新講習の30時時間以上の研修受講は教員にとって自腹を切って増加する相当にハードルが高い業務だ。

 心身の負担だけではない。免許更新制度の受講費用の数万円は免許所持者の実費である。免許更新費用も送料を含めて数千円掛かる。安倍総理大臣は、「教員免許が個人の資格である」ためと述べているが、期限が切れると失職する程の制度であれば、少なくとも雇用側が費用負担しなければいけない。講習料が大学の財政維持ではないかと邪推されても同情の余地はない。

 そもそも指導の質を問うのであれば、改善すべき点は現場の研修や人材育成の制度である。教員の仕事は目の前にいる知識や技能等を教え、人を育てることだ。その時々の社会状況や生徒の特性に合わせた最新の教授法や情報等を知っておかねばならない。自己研鑽せずにぬくぬくと教団に立てるほど甘くはない。多くの先生が悔しい思いをしながら、研修会や勉強会などで自己研鑽している。更新しなければいけないのは制度である。

 お金と時間を返してくれよ…。


※参考文献

毎日新聞、(2021 7 10)「教員免許更新制廃止へ 文科省、来年の法改正目指す 安倍政権導入」

初等中等教育局教職員課、(2007)第166回通常国会議事録

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