

Tom
- Aug 26, 2022
『だれかのまなざし』〜娘を持つパパのまなざし〜
本作は野村不動産グループによるイベントで限定公開された6分40秒の短編CM作品である。数ヶ月後の『言の葉の庭』と同時上映され、現在(2022年8月時点)ではYouTubeなどで視聴できる。モチーフは「家」であるが、そこに「家族の絆」や「未来」といったテーマが織り交ぜられている。監督は新海誠で、代表作に『ほしのこえ』、『秒速5センチメートル』『君の名は』『天気の子』などがある。ちなみに、劇中に『言の葉の庭』と同じシーンが使われている。 新海誠作品であるので、背景描写が美しいのは言うまでもない。そして、彼のもう1つの特徴である緻密で奥深い脚本がはこの短編小説でも際立っている。新人社会人のあーちゃんこと、岡村綾と父の関係を彼女の子ども時代を含めて猫のみーちゃんのナレーションを中心に描いていく。娘の成長をペットという客観的視点を持って述べさせることは猫からだけではなく、別のな視点からも共感を得られるようにしている。 劇中で父は猫の思い出を聞かれて、娘の子どもの頃の話をして主題歌のキーフレーズが流れる。「まなざし」が交錯する場所が私たちが個々に持つ本当の居


Tom
- Aug 19, 2022
『言の葉の庭』~デジタルビジュアルの最高峰~
靴職人を目指している高校生タカオと人生の歩き方を見失った古文教師ユキノ。新宿御苑をモデルにしたこの2人の雨の日だけの逢瀬。そhしてそのほとんどの場面で雨。サブタイトルは「”愛”より昔、”孤悲”のものがたり」という新海誠らしい奥が深く、繊細な映画である。 新海誠監督は、邦画史に残る記録と記憶を残る『君の名は』『天気の子』で有名だ。それらに続くこの作品もまたデジタルアニメーションの傑作で実写かと思われるほどに背景が美しく描写されている。音楽も穏やかに調和され、最後のクライマックスと絶妙にリンクされている。賛否両論分かれる意味深なストーリーラインも新海ワールドらしい。 ※以下、映画の本編のネタバレあり。 それが理由の1つなのであろう。俗な言い方だが視聴後の感想は「気持ち悪い」だった。高校生と教師という設定以上に背景に比べて人物の容姿は漫画らしく描かれているのだが、美しい大人の女性に対して少年があまりにも子どもの容姿である。自分の高校の生徒が学校をさぼっているのを横目にしながら飲酒が禁止されている場所でビールを飲んでいるといった細かい道徳的な観点や設定な
Tom
- Aug 1, 2022
共通テスト(英語 R/L)の分析と講評
2020年度からセンター試験が廃止され、新しく共通テストとして生まれ変わった。そして、試行問題を含めた数回の問題分析の結果、かなり癖のあることが明らかになってきた。本稿では今後の対策や予想を含めて講評していく。 センター試験では前半に発音・アクセント問題から文法・構文問題等の知識を問う問題が出題されたが、共通テストではすべて長文問題となった。設問を解くために知識を問うことはあるが配点は僅かである。また、リスニングテストの配点はリーディング同様の100点となった。スクリプト量もかなりあって聞き応え十分である。さらに問題は、新学習指導要領にある3観点のうち、特に「思考力・判断力・表現力」を強く意識されて作成されている。 もちろんこれらは英語を指導する立場としては歓迎すべき要素だ。場面設定はすべて日常的となっていて、従来の「入試英語」にはあまりなかった魅力がある。また、アメリカ英語以外にイギリス英語の発音や言い回し、非ネイティヴの英語(具体的には日本人の英語)の登場はリアリティーがあって現場の指導にも有効である。 しかし、擁護するのもここまでのようだ。