Tom
- Mar 27, 2022
『持続可能な医療』〜医療を俯瞰的に問い直す〜
体調を崩して病院へ行く。私はここでいつも何か苦虫を噛み潰す気持ちになってしまう。医療情報と金銭権力を持っている大病院、計算根拠が複雑な診療報酬点、二度手間感じる院外処方箋。これらは適正に処理・評価されていているのか。このまま家族や私の最期の日まで適切な医療恩恵を受けられるのだろうか?結局、体調が回復してしまえば、日常に忙殺され、そのときの判然としない気持ちは消えてしまう。そんな私も本書を読み進むにつれて、日本の異様な医療制度に気づくことになるのだ。 著者の広井義典は東京大学・同大学院を、マサチューセッツ工科大学(MIT)を経て現在は京都大学こころの未来研究センター所長である。本書は、これまでの長きに渡って研究されてきた理論(著書・論文等)と多岐に渡る実践的な活動を融合させ、今後の研究テーマを示しながら、希望を持って公共的に持続可能な医療を目指している。キーワードは、科学、公共性、死生観、ケアである。 読み始めてすぐに私が抱いていた医療への懐疑が明らかなる。つまり、今の日本の医療制度は外部関係者が医療を眺めたときに「ブラックボックス」となっていて、
Tom
- Mar 10, 2022
戦争反対(ロシアのウクライナ侵攻)
ロシアのウクライナ侵攻は絶対に許されない蛮行だ。もちろん私たちは新米欧諸国の枠組みの中でメディアコントロールされているので、他方にも主張があるかもしれない。しかし、戦争という暴挙が多くの命を奪い、幸せな日常が失われている事実は変わらない。特に、ロシアの戦術は非人道的で絶対に正当化されるべきではない。戦争ではなく軍事作戦だと詭弁を並べ、弱者の市民を殺傷し、人道回廊にも砲火を浴びせる。これらは国際法に違反している。強く非難されるべきだ。 国連は何をしているのだろう。今の国連は創設時の理念にあるような有事の際の抑止力として役割を果たせていない。常任理事国の拒否権も乱用されていて、法的な拘束力のない声明文だけでは効果が乏しい。むしろ国連が公平・公正な立場で調停や仲裁の場を戦略的に先導しなければいけないのに。以前の記事「国連により大きな権力を」でも述べたように、国連が世界の「警察」として武力を保持し、適正に行使されるようにするべきだ。「国連軍」なるものが存在していれば、ロシアのような武力大国にも対抗できるだろうし、サイバー攻撃や同盟関係による経済制裁、サイ
Tom
- Mar 6, 2022
「なんとかする」子どもの貧困〜できることを少しずつ〜
タイトルの「なんとかする」には、筆者の貧困問題に対して「1ミリでも進め」ようとする意気込みが込められている。貧困という実態を把握し、たとえある実践の行動が最適解ではなくてもその行動を尊敬しようとする姿勢がある。第一章で子どもの貧困問題の概論や理論面が説明され、それ以降は個人、自治体、企業から法制度の支援例に言及している。 湯浅誠は08年には年越し派遣村村長として活躍。その後、内閣府参与、法政大学教授を経て、東京大学特任教授。同時に、全国子ども食堂支援センターむすびえ事務局長、反貧困ネットワーク事務局長等の社会活動家として活躍している。本書にはそうした広い経験と深い知見による心の叫びを感じられる。その核は格差社会、特に子どもの貧困を自己責任論ではなく、すべての人が今後の社会のために解決すべき自分事として捉えるということだ。 子どもの貧困問題は他人事ではない。昭和の一億総中流時代がから平成の格差社会の拡大で、多くの人が失業と貧しさとは紙一重の生活をしている。社会のセーフティーネットも弱いことを実感する。高等学校の教育現場でもそれは顕著だ。大学受験で合