Tom
- Jan 10, 2022
『街場の平成論』〜私の平成論〜
自分が過ごした時代区分である「平成」というものがどのように理論的に総括できるのか。それが本書を手に取った理由である。内田樹編者にしたアンソロジーで、政治、文化、自然科学、宗教、哲学など広い分野で平成が論じられている。令和の時代を展望するにあたって、平成がその前後と何が異なるのかを比較することで見えてくるものがある。 編者の内田樹は一人目の論者で政治的な側面から時代を五段階に区分する。平田オリザはスポーツと韓国を論点とし、プレイディみかこはジェンダー論、白井聡は政治と歴史、平川克美は労働と消費者、情報技術とアイデンティティ、中野通は生命科学史、釈徹宗はオウム真理教を軸にしたカルト宗教のイスラームの2点、そして鷲田清一は「小さいな肯定」をキーワドにした哲学的観点からそれぞれ論じている。白井聡「ポスト・ヒストリーとしての平成時代」はやや難解ではあるもののエビデンスも十分で圧倒的なロジックである。経済的なエビデンスから「大文字の歴史」と個々の精神性や哲学面まで幅広く分析されている。全体また複数で共通している概念もあれば、自分では気づきにくい新しい知見が得
Tom
- Jan 1, 2022
襷よ、繋がれ!
大学の部活動となると、もはや高校とは別世界である。大学の名前を背負って戦うわけで負けることが許されない世界だ。箱根駅伝を走った渡辺康幸もあこがれの先輩と4人部屋で過ごし、時にはゴキブリが身体を這うこともあったという。それでも走るのが楽しくて仕方がなかったと早稲田学報で語っている。その功績は選手としても監督してはここに書き切れないほど輝かしものであるが、今年も早稲田だの選手はその教えを繋いだ選手が箱根路を走る。 もちろん伝統校の中央大学、優勝候補の駒澤大学、強豪校青山大学なども同様だ。だからこそというべきだろうか。毎年熱いドラマが繰り広げられる。昨年の大逆転劇を覚えている人も多いだろう。1位の創価大学と2位の駒沢大学とのタイム差は2分14秒。素人でさえも逆転不可のはみ明白であった。誰もが創価大学のアンカーの失速を予期しなかったし、それを責める気にもなれないだろう。早稲田はさすが雑草魂というべきか、毎年どこからその力が出てくるのかと思うほどラストスパート力がある。あれだけの超距離を走って、数秒で順位の差が出る。最後まで目が離せない。 今年はハイスピー
Tom
- Jan 1, 2022
謹賀新年 2022
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。 突然見知らぬ人がお茶をしませんかと家に上がり込み、家中のものを食べ尽くして、そのまま帰っていく。それでも残された家族は動揺もせず、次に同じ客がきた時のためにその分まで食料を買うのだ。ただし、その客は結局、二度と現れなかった。 これは、"The Tiger who Came to Eat"(『おちゃをのみにきたとら』)という童話の要点である。この他にも衝撃な点は多いだが、はたして作者は子どもにメッセージとして何を伝えたかったのか。困っている人がいたら分け与えなさいということ?童話にしては奥が深すぎて、読み聞かせの後に頭の中には「?」しか残らなかった。 作者及びその時代背景などを調べてみた。作者はジュディス•カー。ナチスから逃れるためにイギリスに出国したという。本当の意味は、ナチスと関係が強い計算された反戦文学ではないか。 同時に、『海の沈黙』を思い出した。ドイツ将校が突然家に押し入り、数日滞在した後、最後は戦地に向かう物語だ。設定状況違うものの、この童話でいえば「虎」はナチスであり、「