Tom
- Dec 31, 2022
大晦日 2022
今年の元旦の記事「謹賀新年 2022」では、”The Tiger who Came to Eat”(『おちゃをのみにきたとら』)を紹介した。物語の概要は、虎が突然ある一家に押し入り、食料を食べ尽くした挙句に立ち去るが、それでも家族の幸せは続くというものだ。それにしても虎の所業は図々しいにも程があるが、結局は子どもの読む空想の世界だと思っていた。 現実は虎の非礼をはるかに超えている。国際法を無視し、一方的に他国に侵攻した。ロシアのウクライナ侵攻である。一刻も早い終戦を祈るばかりである。もちろん戦争の真実は計り知れないところもあるが、確実に言えることがある。いかなる理由においても戦争は許されないということだ。 日本でも一方的に生命を奪う事件が起きた。法治国家の日本で元首相が暗殺された衝撃は大きかった。当初は民主主義の存続の危機を案じたが、今日現在では宗教法人に関する逆恨みと報じられている。それでも、宮台真司氏への襲撃事件のように暴力に訴える事件が後を絶たないことに私は危機感を抱いている。 年初の記事では、私は作者のバックグラウンドから戦争のアンチテー
Tom
- Dec 19, 2022
今年の漢字2022
「12/11 18:15 今年もいろいろありました。明日発表の「今年の漢字」は世相を表すので興味深いです。私の予想は「侵」で、個人的には「戦」が妥当かなと思っています。皆さんの予想は?」 これは日本漢字検定の今年の漢字が発表される前日につぶやいた内容だ。予想はは外れたが納得の内容だ。ロシアのウクライナ侵攻は、国際平和だけではなく、国連を初めとした平和維持の枠組みの在り方から世界経済まで多大な影響を及ぼした。新型コロナウイルスは変異しながら私たちの日常に深く侵入し、終わりのない戦いを続けている。 「戰」には対戦相手が必要だ。そう、私たちが「戦」うべき本当の敵はどこだ。それはまさに人類なのではないか。ウクライナ侵攻もコロナ・パンデミックも私たちの無知や強欲さといった人間の無用の弱みによって起因し、拡大した「人災」であると捉えることもできる。一方で、私たちには他の動物にはない言葉と論理の力がある。言語の論理が「戰」の敵を完封することが取り得る最善の手段の一つだろう。 それでは、毎年恒例の「私の今年の漢字」シリーズ。 2008年「転」 2009年「停」
Tom
- Dec 7, 2022
『18歳からの格差論』〜すべての人に同じ土俵の提供を〜
日本の社会問題の根本にあるものは「格差社会」だろう。昭和の層中流階級社会はバブル崩壊を機に長い不景気に入った。成果・能力主義や人件費の削減にによる非正規雇用が広がった。その流れの中で、AI問題(AIと人間が共存の模索)や民主主義の問題(熟議によるプロセスを重視した民主主義の見直し)がある。現在は、格差社会は教育格差、健康格差、情報格差、所得格差など細分化されて議論されている。そうした問題を改めて再認識しようと手に取ったのが本書である。 著者の井出英作は1972年生まれで、東京大学大学院を卒業後、日本銀行奇乳研究所、その後、横浜国立大学等を経て、慶應義塾大学教授で、財政経済学と財政経済史の専門家である(2016年現在)。「18歳」というタイトル通り、本文は非常に短く、筆者の深い見識をできるだけ噛み砕いて説明していkる。経済の専門用語が多少含まれるものの、筆者が本当に伝えたい理論とその背景にある熱い気持ちが伝わってくる。 本書の肝はその筆者の情熱である。例えば、生活保護受給者。そのほとんどは正当な理由で受け取っているが、羞恥心がありながらやむを得ない