Tom
- Apr 25, 2022
『なぜ「おしえない授業」が学力を伸ばすのか』〜高次の指導指南書〜
初任校ではノートパソコンを活用した最新の講義型の授業をしていた(つもりだった)。当時は英文解釈が中心の予備校風の授業で、生徒に寝られたら見た目が悪いと必死だったが、結局テスト一週間前に演習させるのが最も力がつくなと感じていた。実はその秘密が「生徒の能動的な学習」だったのだろう。大学院での研究以降は、「アクティブラーニング推進校」などの経験から、生徒が「能動的に学ぶ」、そしてそれが結果的に楽しい授業を実践している。春休みは授業を総括し改善するには最適で、今年はこれを参考に授業の組み立てを考えてみた。 著者の山本崇雄は、執筆当時は東京都立両国高等学校附属中学校主幹教諭で、現在は新渡戸文化中学校・高等学校等の複数の学校・企業と連携して英語教育の指導を行なっている。東進ハイスクルールの母体である株式会社ナガセと教育新聞社が主催する夏の教育セミナーでは分科会で安河内哲也先生とともに研修講師として活躍されている著名な方である。 本書は、「アクティブラーニング」の基本的な概念(ここでは「教えない授業」と同義)を学べるが、それ以上に著者の「教えない授業」の理念の


Tom
- Apr 1, 2022
『秒速5センチメートル』〜初恋の美しい描写〜
「え?何を言いたいの?」この映画の視聴直後の正直な感想だ。切ない。切なすぎる。だが、それが衝撃過ぎてこの映画の主題が分からなかった。何をテーマにし、何を訴えかけているんだろう。これ以上は言葉が見つからなかった。 『秒速5センチメートル』は新海誠監督作品で、2007年に公開された。上映時間は63分である。初恋の行方を追うストーリーである。「桜花抄(おうかしょう)「コスモナウト」「秒速5センチメートル」の3つの連作短編という形になっている。英語の副題は、”a cahin of short stories about their distance”で、キャッチコピーは「どれほどの速さで生きれば、きみにまた会えるのか」である。 物語の中心はは貴樹と明里の初恋と、その後の心理的な変化である。そして、2作品目のコスモナウトでは貴樹に恋する三人目の主人公が加わり、おそらくもう1つの初恋から貴樹を抒情的に未来を紡いでいる。あの桜の木の下で2人の気持ちに変化が生じ、その変化で男女の恋の距離が生まれる。手紙に込めた想いを伝えないことで、そして2章でも想いを伝えないこ