『知の体力』 〜高等学校の学びの本質〜

大学の卒業論文には苦い思い出がある。大学受験までの思考、つまり授業の課題には常に答えがあるという固定概念のせいで、答えのない問題に自分なりの意見を見つけることがあまりなかった。一応卒論ではある程度の結論には達したが、参考書の引用や見解をなぞる部分も多くなってしまった。指導教官に喫茶店で叱られた苦い思い出もある。もし私が学生時代に新書『知の体力』を読んでいたら、卒業論文はまた違った結論になっていただろう、というのはひどい言い訳である。ちなみに、この新書は、同一年度の高校入試国語の問題として5県で出題、さらに高等学校の国語総合の教科書にも掲載された話題の一冊であることも追加していから本題に入ろう。 著者の永田宏一は、京都大学名誉教授で歌人であり、「文学とサイエンス」の専門家として紹介されることが多い。本著の出発点は、大学生や学び続ける人に向けたものであったという。そして本書の内容は大学受験までの答えがある評価問題から、答えがないことを前提にした、本来のあるべき学問の追求という、ある種の「パラダイムシフト」の提案である。著者は、そのためにも、第一に、自分の失敗や親からの自立といったことで、自分の可能性をさらに広げていくことが重要であると述べている。第二に、他者尊重や大多数の<他人>ではなく、愛しい<相手>の関係に中で自分の輝ける場所があるといった、人生の道案内としての「思考の足場」を提示している。 同じ教育機関であるのに、高校までのそれと大学での学びの質はまったく違う。例えば、各学校種で入学試験が行われるが、大量の受験生を公正に評価するとなると採点基準が必要となり、従って答えは基本的

新型コロナウイルス 〜緊急事態宣言を受けて〜

この記事は一部を書き始めたところで間に合わずに、数日遅れの公開になってしまった。新型コロナイウイルスに関わる緊急事態宣言である。記事の本線にしていたのは、早く宣言を出してもらわないと手遅れになってしまうとう内容であった。事態は日々悪化の一途を辿り、これからの状況に危機感を抱いていたからだ。 ところで、新型コロナウイルスへの対応の中で重要局面がいくつかあった。オリンピックの開催を巡ってはIOCとの調整をしながらも最終的には開催が延期された。もちろん選手選考や環境維持の支出増加等多くの課題があるが、それに鑑みてもオリンピックの延期は妥当な判断であった。どう考えてもクラスターの発生を抑えることはできないし、むしろロックダウンが必要な状況で、国際スポーツの開催は困難である。次に、志村けんの死去は、目に見えない敵の存在を白日の目に晒すことになった。新型コロナウイルスの対応の難しさの一つに感染者が無症状であり、しかも高齢や幼少の方、さらに基礎疾患を持っている方が罹患すると一気に病状が悪化する可能性がある。日本を代表するコメディアンの死は社会に大きなインパクトを与えたのは間違いない。そして、4月7日夕方には首相が緊急事態宣言を発令し、東京を始め感染拡大がひどく悪化している地域に緊急事態宣言が発令された。政府の動きは遅きに失した感は否めないが、それでも緊急事態宣言は妥当な判断である。 新型コロナウイルスには様々な論点がある。そこで、ここでは自分の専門分野である教育に絞っていく。まず、全体的な動きであるが、教育現場は混乱しながらも最善の対応をしている。これは自画自賛をしているのではない。教職員の

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