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羽生善治、永世七冠・国民栄誉賞獲得!


 2017年12月5日、16時23分に渡辺明竜王が投了した瞬間に将棋界にとてつもない金字塔が立てられた。羽生善治新竜王が永世七冠を達成したのだ。さらに、この実績が評価されて、翌年2018年2月13日には国民栄誉賞を受賞した。将棋界の歴史的快挙である。

 原則、将棋の棋士になれるのは三段リーグを勝ち抜いた4人だけである。プロは同世代でトップを争う天才を相手に勝ち続けないといけない。タイトルを獲得するということは驚異的な頭脳が必要だ。まして、永世称号は一定数のタイトル獲得及び防衛を果たさなければ名乗れない。将棋の歴史の中で永世称号を1つでも獲得したのはたった10人しかいないのだ。それを7大タイトルすべてで達成してしまったのである。

 将棋は互いに駒を動かすが、ある局面での一手でその後の数手が必然になることがある。これは「直線的」と呼ばれる。それに対して羽生将棋は、プロでさえも予期しない「曲線的」な指し回しが特徴だ。雑誌「将棋世界」(3月号)でも分析されているように、短時間の対局での瞬発力が最大の武器である。棋譜を眺めていると、この「羽生マジック」は、勝つためだけの戦術的な手段であるとともに将棋の真理を追求していこうとする謙虚か姿勢から生まれてくるのではないかと感じる。「新しい将棋に対して自分なりの発見をして、理解を深めたい」(同誌2月号)という言葉が印象的である。

 将棋にスピードという新しい概念を作り出した谷川浩司十七世名人(引退後襲名)でさえ、「永世称号は一つだけでも大変なのに、七つ全てとは信じられません。」と述べている。さらに、日曜日の将棋トーナメントは一般棋戦であるが、そこでは10回の優勝で「名誉NHK杯選手権者」であることも付け加えておこう。

※参考文献

(2018 2)、『将棋世界 2月号』日本将棋連盟

(2018 3)、『将棋世界 3月号』日本将棋連盟


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