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今、問われている働き方とは?

 豪州に留学中、運転免許を取るためにドライビングスクールに通った。通うとは言っても向こうでは最初から実地練習となる。苦い思いであるが、初めて車をバックした時に、加減が分からずペダルを強く踏んでしまい、ベンチに突っ込んでしまった。問題はそこからで、私は言われるままに修理料金を払ってしまった。通常は教官が保険に入ってるのが普通で、支払い義務はなかったのである。

 そこで、公的機関の弁護士にお願いして、支払いの回収を依頼した。ところが、とにかく担当者が休暇中でなかなか会えない。結局、帰国の日が迫ってしまい、回収不能になってしまった。豪州の人はなんて怠け者なんだ、と思ったものだが、事実は逆であろう。日本人は働きすぎなのだ。世界に目を向けると日本の異様さが分かる。

 アメリカでは終身雇用ではなく目標管理制度と、いつでも解雇できる随意雇用が主流である。結果さえ出せば勤務時間は関係ないわけで、実に合理的でシビアな世界だ。また、カナダやデンマークでも勤務時間ではなく、与えられた仕事をこなすかどうかが重要となっている。それに比べて日本は年功序列・終身雇用を基にした長時間勤務が常態化している。

 ただし、近年話題になっている「働き方改革」は、単に勤務時間を短くすれば良いと言うことではない。早稲田大学商学学術院の小倉一哉は「業務の無駄を省いたり、企業として効率的な稼ぎ方を模索したりすること」が主眼であるべきだと言う。そこで、例えば、働き方改革コンサルタントの林宏昌は、「目的、方法、統合」が成功のポイントだとしている。特に、人事・総務・ICTの各担当者がトライアンドエラーを繰り返しながら、課題と価値を実証することを提唱している。日本にも仕事は量より質であることを意識した働き方を目指さないといけない。近い将来、「日本人はなんて怠け者なんだ!」と思わせたい。

※参考文献

早稲田大学校友会、(2019・12)『早稲田学報』

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