『うつ病九段 ー プロ棋士が将棋を失くした一年間 ー』〜うつ病の偏見とも戦う〜
- Tom
- Mar 25
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将棋の世界では、年間で4人しか棋士が誕生しない。そして、A級からC級(厳密にはC2組)までランク順に分かれていて、A級に在籍するのはトップ棋士の証である。そして、棋界でA級に辿り着くのは天才の中の天才だけだ。そんなA級に在籍した経験のある棋士、先崎学九段が本書の著者である。ちなみに九段も将棋界の最高段位であり、これもまた選ばれし者の偉業である。
『うつ病九段』はそんな棋士が患ったうつ病の闘病手記である。体調に異変を感じた初期の症状から、生々しい入院生活の様子、さらには体調が不安定な回復期から現役復帰直前までの様子が細かく綴られている。どこの部分を切り取ってもその辛い様子が伝わってくるが、本人が苦しむ程度は想像を絶するところがあるだろう。実際、文面通りの症状が自分の身に起こればまさに生きた心地がしないだろうことは容易に想像がつく内容だ。ただ、これは筆者の文才によるものだと思うが、どことなくすらすらと読めてしまう文体になっている。これはじめじめした恨みつらみの吐き出しではなく、うつ病に対する強い闘争心からくるものだろう。多くの人に読まれている理由はここにもありそうである。
近年は、うつ病に対する世間の見方も大きく変わってきている。うつ病は脳機能の障害であることは常識になりつつあり、働き方改革の一環として認知度も上がってきている。それでもうつ病に対する偏見は完全に腐食されているわけではない。筆者はそうした状況を打破しようと、ありのままの自分をさらけ出すことも本書執筆の動機の一つであるという。自分の手で将棋を勝ち上がったように、うつ病も現役復帰を目指して将棋のように克服した。そんな筆者の力強さと熱い気持ちも伝わってくる。
※参考文献
先崎学、(2018 7 15)『うつ病九段』文藝春秋








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