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衝撃!英検が採点にAI導入を発表(後編)

 AIの飛躍的な発展によって、私たちの生活が大きく変わろうとしている。現在の技術革新と社会動向をみれば、日本英語検定協会が採点にAIを併用導入することは必然的だった。はたしてこの精度が飛躍的に伸びたら、人間の採点、例えば面接委員は不要になってしまうのだろうか。その場合、私たちに求められている英語の4技能はAIに補完されうるのか。ここに英語(他言語も含む)の学習(指導)意義はあるのあろうか?

 上記の問いに対して、まず機械の技術的な側面から見ると、現在大きく2つの問題あると科学誌『Newton』は述べている。1つは「AIが決められた枠組みの中でしか命令をうまく処理できない」(「フレーム問題」)ことだ。二つ目は「記号が実世界の意味に直接結びつかないこと」(「シンボルクラウンディング」)で、例えば、AIは馬に縞模様をつけたような動物をシマウマと呼ぶという概念形成ができない。こうした曖昧で創造的な処理は言語使用に必須の要素であり、AIが自我や感情を持たない限りは不可能な領域である。仮に、そのうした能力をAIが獲得した時には、すでにシンギュラリティが起こっていて、すでにここの議論とは別のフェーズに入っていると言えるだろう。

 次に英検に直接関連する教科「外国語(英語)」の視点から述べる。私は、英語学習の意義は、

世界標準かつ倫理的思考に基づく4技能を身に付ける

他国の文化・伝統を学び他者尊重や平和創造への良識を深める

学習プロセスを重視し、自尊心向上等の人格形成を図る

の3点だと考えている。①に関しては、機械にのみ依存したコミュニケーションは人の心に響かないだけではなく、自分の気持ちロジックで相手に気持ちを伝えるのが困難であることは経験的に推理できるだろう。また、英語習得過程で触れた異文化理解によって自己・自国を相対化し、他者への尊敬の念と広く深い教養を身につけるのが②の趣旨だ。最後の③は、計画的に勉強するなど自らを律しながら努力を継続することで、目標を達成し自信を持つことができることを意味する。

 世界の共通使用言語は英語であり、習得後に一番有利なのは明白だ。確かに日本は生活様式や制度上、本当に英語が必要とされる場面に身を置くのは少数かもしれない。しかし、等しく学習機会を提供するのが日本の教育であり、チャンスは誰にも開かれている。その過程で有益な学習補助、今回の場合はAIによる採点。AIとの共存で私たち人間が最大限に知識・能力を高めるより良い方策を考えていく時期に入ったと考えるべきだろう。



※参考文献

日本英語検定協会、(2018 10 17)、「AI による自動採点実証研究で有意な成果 ―2019 年度から英検に順次本格導入予定―

日本英語検定協会、(2018 10)、「4級・5 級スピーキングテストに関する Sinewave 社(iFlytek 社)との自動採点共同研究レポート

ニュートンプレス(2919 9 7)、「人工知能のすべて」『Newton 2019年9月号』

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AIが人間の力を借りることなくその能力を超越する技術的特異点[シンギュラリティー]に到達するのが2045年であると言われている。その未来予測は世界中で大反響を呼び、AIによる人類の恩恵と損害など様々が議論がなされている。AIとは何かを正しく理解するには、まずは本書がお勧めだ。実際、教育業界最大手のベネッセコーポレーションが大学入試小論文対策に挙げている推薦図書でもある。 新井紀子氏は国立情報研究所

初任校ではノートパソコンを活用した最新の講義型の授業をしていた(つもりだった)。当時は英文解釈が中心の予備校風の授業で、生徒に寝られたら見た目が悪いと必死だったが、結局テスト一週間前に演習させるのが最も力がつくなと感じていた。実はその秘密が「生徒の能動的な学習」だったのだろう。大学院での研究以降は、「アクティブラーニング推進校」などの経験から、生徒が「能動的に学ぶ」、そしてそれが結果的に楽しい授業

大学入試改革の中、英語科指導の中で最も大きく変化したのが共通テストの問題、特にリスニングの配点がリーディングと同じになったことだ。これは新学習指導要領が4技能重視のアクティヴラーニングを推進する以上のインパクトがある。結局、生徒の学習のモチベーションや教師側の求められる実績に直結するからだ。そういった理由でこの研修会に興味を持って参加した。 講義の結論から言うと、自分がある程度英語を極めた学習方法

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