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孤独の解消 ~早稲田のクリエーター 藤吉オリィ~

 インターネットを通じて遠隔操作ができる『Orimime』(オリヒメ)というロボットがある。そのロボットにはカメラ付いているので、遠隔操作している人、つまりカメラの向こう側にはユーザーがいて、私たちの顔も見えている。ペンギンのような手をパタパタさせながらリアルタイムで質疑応答をするのだから、緻密な設計に反して可愛らしい。そんな斬新なロボットを発明したのが藤吉オリィであり、早稲田大学理工学部出身であるということを最近知った。

 今や新型コロナウイルス によってますますオンラインでテレワークをすることが推奨されている。その時は新型コロナウイルななど想像もできなかった事態であるが、いずれにしてもこの発明はまさに「斬新」である。なぜなら、このロボットの遠隔操作をする人は、寝たきりの人や重度の障害や病気等があるからだ。発明者の藤吉氏は、学生時代に不登校の経験があり、その苦しさを通して自らの存在感を、つまり、アイデンティティの確立を社会貢献の重要なキーワードとして認識するようになったのだ。「暮らしの中で困難を見極め、孤独を解消できるような取り組みをしたい」と『早稲田学報』で語っている。

 アドラー心理学では、「すべての悩みは人間関係の中にある」と定義している。これは見方を変えると、人間は他者との関係の中で常に生きていると解釈することもできる。つまり、病気や障害等によって社会から距離を置くことが生きがいの低下を招くことになる。それはその人にしか分かり得ない想像を絶する絶望感もあるだろう。だからこそ、社会的な障壁がある人でも、遠隔操作によって自分らしい社会貢献のあり方に気付く契機になるのだ。

 高等学校、特に特別支援教育では、こうした最先端の技術を紹介しながら生徒の進路実現を目指すこともある。『Orihime』の特筆すべき点は、従来の就職支援に新しいネットワークを作ることである。従来は「求人者ー求職者」の関係が基本で、高等学校の進路指導は「求人社ー高校ー求職者(高校生)」の図式なるのだが、そこに、「オリィー」という企業がハード面・ソフト面で支援し、新しいリレーションが構築され、まさににその取り組みも斬新なのだ。日本を代表するクリエーターは、今も「孤独の解消」をテーマに活躍しているのである。

※参考文献

早稲大学校友会、(2020・2)『早稲田学報』

岸見一郎(2018)、『100分de名著 アドラー 人生の意味の心理学』NHK出版

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