• Tom

法科大学院制度の見通しの甘さ


 法科大学院の共通入学試験にあたる「適正試験」が廃止され、ますます当初の設立概念とは乖離していくことになりそうだ。法科大学院進学希望者の数は激減し、法曹界は大きな危機を迎えている。

 改革を実行するにあたって確実に物事がうまくいくとは限らない。今後社会を見据えて転換を図ったことは評価すべきだ。しかし、その見通しや制度が甘すぎた。日本はクレーム社会になりつつあるが、それが必ずしも法的な争いになるとは限らない。また、法科大学院の中のカリキュラムが不十分だったことも容易想像できる。大学院の教授陣は法学の専門家だが、実務的すなわち司法試験解法のノウハウには長けていない。従って、法学大学院の乱立がこの制度崩壊の序章になるだろうことを予期できなかったのである。

 最大の問題点は、法科大学院を卒業後に3回以内に合格をしないと一切の受験資格を失う「三振制度」だ。多大な労力と時間をかけて法科大学院に入ったにもかかわらず、たった3回の試験で受験資格を失うことに理不尽さを感じる。おまけに、旧司法試験時代にに比べてはるかに多くの合格者を出すと明言したにもかかわらず、合格者の質の低下を危惧して合格者数を年々減らしていくというのは、ほとんど詐欺に近い。もし、質の低下を危惧するなら、それは受験生の問題ではなく、法科大学院自身の問題ではないか。すなわち、制度設計の見通しが甘すぎるということである。

 制度設計者は、受験生の立場をほとんど考慮に入れてない。もし自分が受験生であったら何を望み、どう行動するかを考えれば容易に想像できるレベルだ。受験生は人生をかけた戦いをしている。安易な発想と中身で多くの努力と人材を無駄にしてはいけない。


7 views

Recent Posts

See All

ロシアのウクライナ侵攻は絶対に許されない蛮行だ。もちろん私たちは新米欧諸国の枠組みの中でメディアコントロールされているので、他方にも主張があるかもしれない。しかし、戦争という暴挙が多くの命を奪い、幸せな日常が失われている事実は変わらない。特に、ロシアの戦術は非人道的で絶対に正当化されるべきではない。戦争ではなく軍事作戦だと詭弁を並べ、弱者の市民を殺傷し、人道回廊にも砲火を浴びせる。これらは国際法に

タイトルの「なんとかする」には、筆者の貧困問題に対して「1ミリでも進め」ようとする意気込みが込められている。貧困という実態を把握し、たとえある実践の行動が最適解ではなくてもその行動を尊敬しようとする姿勢がある。第一章で子どもの貧困問題の概論や理論面が説明され、それ以降は個人、自治体、企業から法制度の支援例に言及している。 湯浅誠は08年には年越し派遣村村長として活躍。その後、内閣府参与、法政大学教

自分が過ごした時代区分である「平成」というものがどのように理論的に総括できるのか。それが本書を手に取った理由である。内田樹編者にしたアンソロジーで、政治、文化、自然科学、宗教、哲学など広い分野で平成が論じられている。令和の時代を展望するにあたって、平成がその前後と何が異なるのかを比較することで見えてくるものがある。 編者の内田樹は一人目の論者で政治的な側面から時代を五段階に区分する。平田オリザはス

Featured Posts

Categories

Archives