『差別の現在』 ~高度なロジックにある繊細な他者への想像力~

June 2, 2020

 日本の右翼の一部は、非常に排他・差別的で読むに耐えない言説、目を覆いたくなるようなヘイトスピーチを繰り返す。「ヤフコメは廃止すべき」で書いたように、ネット右翼は同調することでしか繋がりを確認できず、主張に妥当性もないまま最終的には感情論で終わってしまう実態を紹介した。もちろんそのような言動を「すべきではない」と啓発的に提示することも大切であるが、今回紹介する『差別の現在』では、私たちが差別に対してどのように向き合うべきかを本質から具体的な在り方までを終始深い考察でまとめている。

 著者の好井裕明氏は、出版時は日本大学文理学部社会学科教授で文学博士である。『差別言論』等の著書、「差別」に関する調査、講演も多いようであるが、随所に映画・ドキュメンタリーの詳細な記述があり、その方面への知見と愛を感じる。巻末には「差別を考える映画ガイド」まであるのが、その一方で本文はやや難解である。しかし、各章における深い見識が「おわりに」で一気に回収され、まるでミステリーの謎解きの如く読者に語りかけるもうまいのである。

 「差別」に対して私たちはどれほどの認識を持てているのだろうか。日常を過ごす中でここまでの洞察力を持てる自信が持てないが、筆者は強い危機感を持って、「他者を理解できるから身体作り」と「しなやかでタフな日常文化の創造」と提唱している。「差別ー被差別」という単純な図式では捉えきれない現実やカテゴリー化が永遠に浅はかな不幸を導くことになるこを論証する。「差別されるべき存在」だと「こちら側」が勝手に思ってしまう社会的な、ある種の権威に懐疑を持たなければいけないし、自分が「差別」をしてしまう可能性を十分に理解することめ必要だ。そこで他者へのどれだけ想像力を持てるか。それを日常の何気ない一コマから、当事者研究(「差別」される人々の意識を中心に研究する手法)という学術的な手法を踏まえながら、あるべき私たちの言動、「他者を理解できる身体づくり」を述べている。

 新大久保で行われているヘイトスピーチやインターネット上で行われる排他的な差別的な言葉がいかに無意味でロジックが浅いのかを痛感する。例えば、「朝鮮人は帰れ!」と叫ぶことで私たちが受け継いできている彼らからも取り入れて息づいている伝統や文化を喪失するだけではなく、それを叫ぶ日本人の誇りを傷つけることにもなるだろう。また、罵倒された在日朝鮮人がそれを克服するためにどのように生きていき、克服していくるのか。その内面の強さ、弱さを感じ取れる感覚・想像力を養うことの難しさを私たちは常に持っていなければならない。高度なロジックにある繊細な他者への想像力。それが「ヘイトスピーチのある日常」から「しなやかでタフな日常」を導くことになるのだろう。

 

 

※参考文献

好井裕明、(2015・3・13)『差別の現在』平凡社新書

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