学生生活と映画
豪州に留学中に、家で勉強することが多かったのだが、気分転換に映画館に寄ったことを覚えている。お金を持っていかなかったので、意を決してチケットを買ったのだが、館内はほとんど人がいなかったので貸し切り状態だった。上映されていたのは『Matrix』3部作の最終章だった。映画館は学校と同じ市街地にあったので、そういった意味では思い出深い場所になっている。
ただ、最近は映画は見るだけではなく、簡単に作り手になれる時代になったようだ。スマートフォンで撮影した動画や音声をアプリで容易に加工・編集し、投影してしまう。例えば、今年の文化祭のクラス発表では、生徒が動画を撮影・編集した上で、ステージに投影させ、登場人物たちが体育館の扉を開ける。すると、今度は生徒がそこから走ってステージに上がりリアルの寸劇をする。私にとっては、動画とオンステージの融合は今までにない発想で、とても斬新に感じた。
大学に目を移す。かつての大学の授業では、映画を文学的にいかに読み解くかが主流であったが、昨今は違うようである。早稲田大学教授でありバルムドールを受賞した是枝裕和は、次のように述べている。「映画を作っていくプロセスから何を学べるかという姿勢で取り組んでいます。」(特別対談 岩本憲児×是枝裕和『早稲田学報』)IT技術の向上とともに「映画リテラシー」も向上しているようだ。
高田馬場から早稲田大学の間を歩くことを「馬場歩き」と呼ぶ。その途中に映画館「早稲田松竹」がある。後に映画監督や著名人となった卒業生が通った思い出の場所である。「足繁く通った早稲田松竹。見終わった後は寮に戻ってウイスキーを飲みながらウンチクを語り合うのが日課でした。」(「思い出の早稲田松竹」『早稲田学報』)こんな学生生活を送れたらきっと楽しいだろうなと思ってしまう。学生生活と映画は意外に切っても切れない関係なんだろうと想像する。
※参考文献
早稲田大学校友会、(2019・12)『早稲田学報』
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